孫子に経営を読む

兵とは詭道なり――サプライズこそ戦略 伊丹 敬之氏

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 ソニーが1980年代にCDを開発したときのプロジェクトリーダーだった鶴島克明さんの言葉に、イノベーションの本質についての名言がある。

「イノベーションとは、感動である」

 つまり、顧客が新しい製品を使って、「大いに驚き、感動する」ことで、市場は大きく動く。それではじめて、イノベーションが実現する、というのである。

 その種の驚きは、顧客からすれば「まさか」の思いであり、ある意味ではそれを仕掛けた企業からすれば詭道でもある。一つには、顧客の思ってもいないようなことを考えて、あえて実現する戦略、という意味の詭道であり、第二には、そうしたイノベーションの直前の製品を買った顧客からすれば、「待てばよかった。そんな製品が出るのなら、あらかじめいってくれればいいのに。多少、だまされた感がある」と思うかも知れない。

 しかし、その程度の詭道ならば、そして実際に提供される製品が素晴らしいのなら、十分に許されていいであろう。さらにいえば、一世代前の製品の購入者が「しまった」と思うような製品の差別化を狙う、という意味での「詭道」なら、ぜひ狙うべきである。

 孫子の言葉は、多様な解釈を許してくれる。詭道という言葉も、奥行きの深い一つの例である。

伊丹敬之 著 『孫子に経営を読む』(日本経済新聞出版社、2014年)第四章「戦略の真髄」から
伊丹 敬之(いたみ ひろゆき)
東京理科大学大学院イノベーション研究科教授。1969年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。72 年カーネギーメロン大学経営大学院博士課程修了(PhD)。その後一橋大学商学部で教鞭をとり、85年教授。この間スタンフォード大学客員准教授等を務める。

キーワード:経営、管理職、企画、人事、人材、経営層

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