孫子に経営を読む

上下が欲を同じくし、経営者は現場に口出ししない 伊丹 敬之氏

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 最後の第五のタイプは、孫子らしく、秀逸である。現場の指揮官たる将の能力が高く、最高責任者である君(経営者)は将のたづなをとっていちいちコントロールはしない(つまり、御さない)者が勝つ、というのである。

 現場を預かる将が有能でなければならないのは当然だが、その将に君があれこれと口を出し、制御するようでは勝ちには遠い、と孫子はいっているわけである。言葉をかえれば、現場への権限委譲が大切、ということになる。あるいはさらに一歩踏み込んで、本社が現場の事業をコントロールしたがる企業に発展はない、と読み替えてもいい。

 経営の言葉でこの五つの「勝ちを知る」者のエッセンスを箇条書きにすれば、つぎのようになる。

・環境の中の自分の立ち位置の判断
・現場での人や資源の運用
・人心の統一
・自分の側の準備や蓄積
・現場への権限委譲

 こうした五つの状態が揃っていれば、企業は勝てる、発展できる、というのは読者も納得できるだろう。まさに、経営の本質をついた、五つの「あるべき状態」の姿である。

 ただ、こうして整理されて表現されると、どこか「いわれてみれば当たり前」という感じもないではない。「それでなんぼのものか?」とつい考える読者もいるかも知れない。しかし、読者の周りの現実を振り返ってみれば、この五つの「勝ちを知る」者から外れる事例がかなり多いことに気づくであろう。

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