孫子に経営を読む

上下が欲を同じくし、経営者は現場に口出ししない 伊丹 敬之氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

「勝ちを知るに五あり。戦うべきと戦うべからざるとを知る者は勝つ。
衆寡の用を識(し)る者は勝つ。上下の欲を同じうする者は勝つ。

虞(く)を以て不虞を待つ者は勝つ。将の能にして君の御せざる者は勝つ」
「知勝有五、知可以戰、與不可以戰者勝、識衆寡之用者勝。上下同欲者勝、以虞待不虞者勝、將能而君不御者勝」 謀攻篇(第三)金谷治訳注『新訂 孫子』岩波書店、51頁

 ここに引いた「勝ち」についての孫子の言葉は、『孫子』の第三篇である謀攻篇の最後にある名言だが、じつはこの文章に続いて『孫子』の数々の名言の中でももっとも有名な名文句がさらに続く。

「彼れを知りて己(おの)れを知れば、百戦して殆(あや)うからず」

 この名文句の陰に隠れてしまうのか、その直前に置かれたこの「勝ちを知るに五あり」という文章は、それほど広く知られていないようだ。

 ちなみに、「彼れを知りて己れを知れば」という名文句にさらに重要な一節を加えた名言が地形篇(第十)にあるので、そちらは書籍の第五章「戦略的思考とは」で取り上げている。ここでは、この「勝ちを知るに五あり」という文章の意義を、経営の視点から考えてみよう。

 この言葉は、「どんな状態になっている者が勝てるか」を五つのタイプに分けて述べたものである。

 まず第一に、戦うべき状況かどうか、判断できる者。

 戦うべきだと思える状況でも、実際に戦って勝てるとは限らない。ましてや、戦うべきでない不利な状況であえて戦さを挑んだとしても、負けること必至である。

 戦うべきか戦わざるべきかの判断ができる者とは、自分の置かれた環境の有利不利の判断ができる者であり、自分たちの能力がその環境の中で勝ちを獲得できるレベルになっているかを判断できる者である。そして、そうした判断のもとになる情報をしっかりと入手している者でもある。

関連情報

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。