孫子に経営を読む

事前の仕込みこそが、勝利の秘訣 伊丹 敬之氏

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 しかし、こう書かれれば、そんなことは当たり前だろう、「事前の仕込み」を十分にしない経営など現実にあり得ない、と思う読者もいるかも知れない。しかし、仕込みが不十分なままで行動を起こしてしまう企業がじつは多いのである。

 競争が始まってから、顧客の反応の悪さなどから自分たちの仕込みが不十分であったことを初めて「発見する」。それで愕然とするが、時すでに遅し。そんな企業も多い。まさに、「先ず戦いて而る後に勝ちを求む」パターンである。

 仕込みが不十分になってしまう理由は、おそらく戦場と市場競争で似ている。二つの大きな理由がありそうだ。

 第一に、仕込みには時間がかかり、大きな努力と投入資源も必要になるため、ついつい「まあこの程度でいいか」という判断の甘さが生まれやすい。その結果、仕込みは現実には不十分になる。

 時間のかかること、投入資源が大きくなることは、誰しも少しでも避けたい。投入資源をけちりたくなる。その上、どこまで仕込めば大丈夫だという明確な基準などない。しかも、技術の蓄積や流通体制の整備などは、どこまで蓄積できたか、どこまで整備できたか、客観的な測定などできない。主観的な総合判断にならざるを得ない。だから、ついつい判断が甘くなる危険が生まれる。希望的観測をしたくなるからである。

 第二に、敵が自分たちの想定を超えた戦略をとってきたとき、なんとか反撃しなければならない。しかし、想定を超えているのだから、勝てる準備が整っていないことが多い。それでも、反撃しないよりは少しでも反撃した方がいい、何らかの反撃をせざるを得ない、と考えてしまう。それで、仕込みが不十分なまま行動に出てしまう。じつは、仕込みが不十分な反撃ならしない方がましなのかも知れないのに、である。

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