孫子に経営を読む

事前の仕込みこそが、勝利の秘訣 伊丹 敬之氏

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

「勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む」
「勝兵先勝而後求戦、敗兵先戦而後求勝」 形篇(第四)金谷治訳注『新訂 孫子』岩波書店、57頁

 妙な言葉といえば、妙な言葉である。

 直訳すれば、勝つ軍は、まず(開戦前に)勝利を得て、それから戦争をする。敗軍はまず戦争を始めてからあとで勝利を求める。

 勝利をまず得てから戦争をする、という言葉が分かりにくいために、妙な言葉に見えてしまう。しかしその意味は、勝てる態勢や状況をまず作ってから、実際の戦闘を始めるべし、ということである。敗軍は勝利への態勢作りが不十分なまま戦闘を開始して、その戦いの中で勝機をつかもうとする。だがそのチャンスが訪れることは稀で、結局は敗れてしまう、というのである。

 したがって、戦略の本質は、「実際の戦いの前に」勝てる態勢と状況を作っておくこと、そしてそうした事前準備をした上でタイミングを見て実際の戦いを始めること、その二点にあるということになる。

 タイミングを見る、とは、敵の動きなどによって勝てる状況になるタイミングを計る、ということである。戦場の情勢は刻々変化する。その変化の中で勝てるタイミングを見計らうのも、「まず勝ちを得る」ための重要なポイントなのである。

 言葉を換えれば、事前の仕込みこそが戦略の真髄、ということになる。企業でいえば、技術の蓄積、生産体制の整備、流通チャネルの構築などなど、ビジネスをきちんと行えるだけの体制を整え、製品の魅力を十分に作った上で、狙いをつけたターゲット顧客に向けて攻勢をかける、ということになろう。それでこそ、持続的に競争相手に対して勝てる市場競争戦略になるだろう。

関連情報

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。