孫子に経営を読む

任して任さず、を外れる経営者の姿 伊丹 敬之氏

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「君の軍を患(うれ)うる所以(ゆえん)の者には三あり。
軍の進むべからざるを知らずして、
これに進めと謂(い)い、軍の退くべからざるを知らずして、これに退けと謂う。
是れを軍を縻(び)すと謂う。
三軍の事を知らずして三軍の政を同じうすれば、則ち軍士惑う。
三軍の権を知らずして三軍の任を同じうすれば、則ち軍士疑う」

「君之所以患於軍者三。不知軍之不可以進、而謂之進、不知軍之不可以退、
而謂之退。是謂縻軍。不知三軍之事、而同三軍之政、則軍士惑矣、
不知三軍之權、而同三軍之任、則軍士疑矣」 謀攻篇(第三)金谷治訳注『新訂 孫子』岩波書店、49頁

 これは、謀攻篇の最終部分で、前節(前回)で引いた「勝ちを知るに五あり」という言葉の直前に書かれている言葉である。君の行動として軍に患(わざわ)いをもたらすようなこと、についての言葉である。

 この連載の第1回から第5回(書籍の第一章)で私は、経営の本質といういわば大枠についての孫子の言葉を五つ選んで解説している。その最後の節として右の言葉をとりあげるのは、これまでの四つの節が経営者が「行うべきこと」を述べた言葉だったのに対して、この言葉は経営者が「やるべきでないこと」を述べているからである。しかも、多くの経営者がついついやってしまいそうなことが出てくる。

 軍を患うるとは、軍を患わすと理解していいだろう。その患うること三つのうち第一は、軍を縻す(拘束する)ことで、軍を進めるべきでないのに進めと命じるとか、退くべきでないのに退けと命じることなどである。

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