トヨタ式リーダー育成法

先入観を捨て、「なぜ」を繰り返し問題の根本に突き進む 三澤 一文

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 トヨタ自動車はグループ内でリーダー人材を次々に輩出し、業界トップの座を守り続けています。のみならず、リーダーたちが身に付けた経営手法は、他業界にも移植され、成果を上げています。そんなトヨタが、リーダーたちに何を伝え、どういう経験を積ませてきたのかを知ることは、いまの日本企業に対してとても重要なヒントを与えてくれるはずです。

 本連載は、筆者自身がコンサルタントとしてトヨタの人材育成をお手伝いした中で出会ったみなさんの事例を、架空のストーリーとして脚色し、冒頭でOJTストーリーとして紹介。その後の「基礎編」で、トヨタの現場で叩き込まれる問題解決手法の基本を解説しています。

OJTストーリー

「イノベーション」に翻弄されたリーダーの決意

 まず、トヨタ社員の生の声を紹介する。

「そもそも、自分が取り組みたいテーマが見つからない」
「いまのプロジェクトに強い『やりがい』を持てない」
「毎日、たこつぼの中にいる感じ。これでは大きなイノベーションが起こせるとは思えない」
「担当分野の専門的な議論をしたいのに、適当な相手が見つからない」
「すぐに成果が出しやすいテーマばかり優先されるのはおかしい」
「そもそもイノベーションでどんな成果を出せば評価されるのか、よくわからない」
「イノベーションの投資効率を、どうやって測るのか?」
「イノベーションを起こすためにどういう人が求められるのか、判然としない」
「技術者のやりたいことと人材育成プランがかみ合っていない」......

なぜ、あの職場活性度が下がったのか?

 企画部門のマネジャーである谷山が、朝出社すると、関係の人事部門から先日の職場活性度指標の結果が届いていた。毎年、定期的に実施している調査なのでだいたい内容は想像がつくが、気になるのは昨年からの数字の変化だ。あいかわらずデータやグラフが多い報告書なので、とりあえずざっと目を通したところ、1枚のグラフに目が止まった。会社の目標値に対して、どの指標がクリアされていて、どれが未達なのかを一覧にしたグラフだ。

 トヨタが重視する「現地現物」「改善」に関係する項目は、前年と変わらず目標値をクリアしている。

「うちの部署もだいぶ『現地現物』『改善』のマインドは定着してきたな。あれだけ毎日、口酸っぱくあちこちでいい続けているのだから、まあ、当然といえば当然か」

 他方、他の指標と比べてがくんと点数が低い、いくつかの項目が気になる。

「うーん。『イノベーションを重視する』『みずから改革を進める』『個人のキャリア目標を尊重する』『人材育成のための配置転換を計画する』、このあたりの項目の点数がずいぶん低いな。その結果かもしれないが、『モチベーション』に関係する数字が昨年より低いのも気になる。毎日忙しいので、みな疲れているのかな。今日は会議が詰まっているので、明日、じっくりチェックしよう」

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