トヨタ式リーダー育成法

「失敗に学ぶ」「失敗を繰り返さない」精神を具現化する 三澤 一文

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「吉本課長、立て続けで申し訳ないですが、この話はどうでしょう。『昭和初期に豊田喜一郎が、本業の自動織機の工場の片隅でエンジンの試作を開始したのは「ブートレッギング」(密造酒づくり)と呼ばれる方法だ。創造的な企業として長年、評価の高い米国3Mで有名な方法だが、会社や上司からやめろといわれたテーマでも、一定の範囲で隠れて研究や作業を続けることで、凝り固まった事態を打破する。事実、この方法で成功した事例は世の中に多い』」

「はい、今度、社内のメンバーを集めて、反省会をかねた自主的な勉強会を検討してみます。経験年数やキャリアによって、社内の問題意識にばらばら感があるので、ちょうど良い機会になると思います」

 吉本課長との振り返りは終わった。実は、藤井は、もうひとつ、経営リーダーの研修資料の中の次の一節を発見したのだが、あえて、それは吉本課長と共有しなかった。日本の有名なピアニストの中村紘子さんの言葉だ。

「なぜ、日本で個性的な演奏をするピアニストが育たないか。それは、創造性がなく、プロ意識の低い音楽学校の先生が多いからだ。アマチュアの音楽家は食えないから、母校が先生として雇う。そういう先生は、自分の権威を守るために、学生に先生のいうとおりに演奏することを強要する。先生のいうとおりに演奏しないと良い点をあげない。だから、ますます、創造性のない音楽家の卵が増える。こんな図式が日本にはできあがってしまった」

 これは自分自身の振り返りとして持ち帰ろうと、それ以上は続けずに藤井は席を立った。間違っても、将来、創造性のないトヨタ人の卵を大量に育てる図式ができないように......。

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