トヨタ式リーダー育成法

「失敗に学ぶ」「失敗を繰り返さない」精神を具現化する 三澤 一文

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 幸い、藤井の相方になった吉本課長は、業界通で知識も経験も豊富だったこともあり、ほどなく仕入れ額削減の対策はまとまった。第1に、本来、集中購買でまとめて価格交渉力を上げるべきところを、過去のいきさつで、妙にばらばらに対応していた。そこで各方面に手を打って、本来あるべき姿にする。第2に、過去の慣例で、過剰品質のサービスをしていた部分があったので、顧客へ十分に説明して、理解を求めながら世間なみの適正水準に是正する。この2つを確実に実行すれば、少なくとも、いま以上の利益水準を維持できる見込みが立つことはわかった。しかし、藤井の本当の宿題は、今回の問題の振り返りだ。たしかに、今回は答えが見つかったから良かったようなものだが、いつもこのようにいくとは限らない。

振り返って発見したもうひとつの「教訓」

「吉本課長、今回のように、問題が露呈してからばたばたしないように、振り返りをしたいと思います。私なりに整理しようと思って、何げなく昨年受講したトヨタの経営リーダーの研修資料を読み返してみたら、こんな内容があったことを思い出しました。『トヨタの最大の敵はトヨタ自身にある。半世紀以上も前にトヨタの経営が傾き、危機的な状況に陥った経験を持ったトヨタ人は、もう、ほとんど社内にいない。現場は好調なトヨタしか知らない社員がほとんどだ。このような状況が続くと、組織の中に慢心が流布することが一番怖い』」

「藤井さん、実に耳が痛いです。うちはまさにそのとおりです。今回の件は何年も前からわかっていたのに、業界のトレンドに真摯に目を向けず、毎日の業務を粛々とやっていればいい、という雰囲気がたしかに職場にありました」

「これも研修資料にあった話です。『昭和初期に当時の豊田喜一郎が持っていた、日本が海外資本の自動車メーカーに牛耳られてしまう、という現状への強い危機感と、自動車を日本の民族産業にしたい、という将来への切望感。この2つの双方向のバランスがとれているときに、慢心は抑えられ、謙虚さが表にでる。人の話に注意深く耳を傾けるようになる』」

「はい、われわれの会社は危機感も切望感も希薄だった、といわれても仕方がないと思います」

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