現場スピードを極める情報活用

「ダメな情報活用」を改める3つの鉄則 日経BPビジョナリー経営研究所 谷島宣之

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 経営幹部が長を務める部門から「なんとしても、これをやってくれ」と言われれば、システム部門はその案件を断ることはできない。冒頭の例のように本当に時間が無ければ別だが、大抵の場合、なんとかしようと考える。システム責任者は「予算と人員に限りがありますが、この条件ならやります」と各部門の長に伝え、「分かった」という返答を得て引き受ける。条件とは「必要最小限の機能をまず実現する」「システム部門が設定する打ち合わせの場に各部門のキーパーソンが必ず出る」といったものだ。

 ところが発注者である各部門は「やはりこれもやってくれないと仕事に差し支える」と追加の要求を出し、しかも「キーパーソンは忙しくシステム関連の打ち合わせに毎回出席などできない」と言い出す。キーパーソンの代理が出席したり、文書を介したやり取りになったりすると、現場がやりたいと考えていることが、開発を担当するシステム部門に正しく伝わらなくなる。

 このため出来上がった情報システムを現場がテストする段階になって、問題が発覚する。大きな手直しが必要になると、開発が遅れ、余計な経費がかさみ、出来上がったシステムに現場が満足しない、「遅い・高い・まずい」という状態に陥ってしまう。

コンピューターは急速に進歩するが、人はしない

 ここで一度過去を振り返ってみたい。企業が情報システムを本格的に使い出した時期はいつごろなのか、色々な見方があるが、50年は経ったとみてよい。50年間でコンピューターの性能、記憶装置の容量、コンピューターをつなぐ通信ネットワークの速度は劇的な進歩を遂げ、同時に価格も劇的に下がった。それに比べ、情報活用について「遅い・高い・まずい」状態を改善できたとは言えない。

 その理由は単純である。どういう情報が必要かと考えたり、その情報を出すシステムを設計・開発したりするのは人間の仕事なのだが、人間はコンピューター機器ほどには進歩しなかった。今後も機器は進歩し続けるが、人間はそれほど変わらないだろう。

 とはいえ50年間における経験から、情報活用を成功させるための知見は得られている。それらを3つの鉄則とし、本稿で紹介していく。情報システムをきちんと用意し、情報を上手に活用している企業を見ると、これから述べる鉄則にそった取り組みをしている。

 鉄則が分かっているのになぜ失敗が続くのか、と疑問に思う人もいるだろう。だが、その理由も単純だ。「頭で理解しても、鉄則通りに体を動かすのは難しいから」である。

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