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ソフト業界に新陳代謝もたらす"起業のインフラ" ITジャーナリスト 田中克己氏

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――先ほどの話では、電通や博報堂など、異業種の出身者がIT業界で起業したケースもあるらしいが。

 その通り。創業者の経歴のユニークさでは、クラウドインテグレーターの「ウフル」の園田崇社長が面白い。電通、モルガン・スタンレー、シティグループ、ライブドアを経て、2006年にウフルを立ち上げた。ライブドアはITと関係が深い会社だが、キャリアをスタートした電通や外資系金融機関ではシステム開発と無縁だった。そんな異業種から参入してきたにもかかわらず、システム開発の難しさや問題点についてもよく理解していて、創業以来、ウフルはずっと2桁成長を続けている。

(※)ウフルの園田社長へのインタビュー記事は『クラウドで「早く安く」、システム開発に変革の波』を参照

 以前のインタビューでも紹介したクラウド型会計ソフト「freee」の起業家である佐々木大輔氏も、博報堂でマーケティングプランナーを経験し、別の会社で投資アナリストをしたのち、グーグルで日本におけるマーケティング戦略の立案などを手掛けた人だ。学生時代は情報システムにかかわる経験を積んでいたようだが、それ以降はずっとマーケティングの畑を歩いてきている。

 この会計ソフトは無料か月額980円~1980円で提供されていて、従業員20人以下の小さな企業がターゲットになっている。この前取材したときは、利用者が10万事業所を超えたと言っていたが、大きな利益を得るまでには至っていないと思う。サービスの機能強化などに向けた「先行開発投資」が必要だからなのだが、さらに数社から出資を受けるなどして、事業を大きくしようともしている。

――創業者がシステム開発と無縁の世界からやってきたのに、どうしてうまくいくのだろうか。

 社長が必ずしも技術に詳しい必要はない。技術に精通したCTO(最高技術責任者)と一緒に経営すればいいのだから。経営戦略やマーケティングを担当する人と、テクノロジーを担当する人がコンビを組めばいい。

 昔のホンダにたとえると、本田宗一郎と藤沢武夫の関係だろう。ホンダの場合、当時の本田社長が技術屋で、藤沢副社長が経営の全権を担い、ホンダを世界的な企業に成長させた。新興ITベンダーの経営陣を見ていても、たいてい経営・マーケティングに長けた人と技術に精通している人がいる。ホンダのように成長できるかどうかは今後を見守りたいが、「このマーケットを開拓するんだ!」という明確な狙いがあり、技術面でも従来の問題点を解決して、より大きな成果を顧客企業にもたらそうとする姿勢が感じられる。

 いま、ソフト開発やITサービスの世界を変革する力は、大手企業ではなくて、たくさんの小さな会社にあると思う。ここではほんの一部しか紹介できなかったが、技術力とマーケティング力を持ち、新しいビジネスモデルを掲げたベンチャーがいろいろ台頭してきている。一方、冒頭で述べたように、IT業界が急成長を始めた1980年代に設立された「古いITベンダー」の一部は、寿命を迎え、淘汰が進んでいる。

 この業界は1つの時代を終えようとしているのだ。そして、新陳代謝が着実に進みつつある。

キーワード:経営、企画、経営層、管理職、技術、経理、イノベーション、ICT、IoT、AI

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