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下請けの格差拡大、ソフト業界の憂鬱 ITジャーナリスト 田中克己氏

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一部の大手は下請けを整理し始めた

 下請けベンダーにとって恐ろしいことに、一部の大手ベンダーは下請けベンダーの数を絞り込もうとしている。仮にこれまで取り引きのあった下請けが100社あったとすると、それを半分に減らし、残りの半分を孫請けに回そうと考えている。孫請けに回されたベンダーは、受注が不安定になるうえ、開発単価を下げなければ仕事が回ってこなくなるので、経営が一層苦しくなる。これも下請けの多層化に伴う格差拡大につながる。

 大手が下請けを整理する理由は、"特需"を除けば「下請けに回せる仕事が減っているから」である。つまり、多重下請け構造が静かに崩れ始めていると考えていいだろう。"特需"が終われば、崩壊のスピードはさらに速くなると思う。

 こうした状況を考えれば、中堅・中小ベンダーはもう多重下請け構造に頼りすぎず、独力で進められるビジネスに軸足を移すべきなのは明らか。事業モデルを変えるとか、自社のソリューションを作るとか、クラウドサービスを出していくとか、新しい事業を展開しない限り突破口は見えない。

 そもそも、以前のインタビューで話したように、「顧客に言われた通りにシステムを作る」という従来の受託ソフト開発の進め方そのものに問題があり、それがシステム開発を「遅く高く」する原因になっている(※)。情報システムは「形のない、曖昧なもの」であり、それを顧客がITベンダーに正確に伝えることは結構難しい。どこかに思い違い生じれば、あとで余計な時間とコストがかかってしまう。

(※)従来の受託ソフト開発に関する問題についての詳細は、『なぜ遅くて高い? 企業システム開発の「不都合な真実」』を参照。

 現時点で、従来の方法でしか開発できない案件も多いが、別の方法で「早く安く」作れる案件も多い。まだ大手ベンダーが手を出していない領域に事業モデルを変える余地があるのだから、幅広く検討していったほうがいい。

――下請け構造にしがみついてもいけないし、従来の受託開発方法にもしがみつくべきではないと。

 そう。ついでに言うと、多重下請け構造と「言われた通りにシステムを作る」という開発方法は相性が悪い。

 顧客から開発案件を受注した大手ベンダーは、開発作業を分割して複数の下請けに発注する。その下請けベンダーは、その一部をさらに孫請けのベンダーに発注する。そうなると、顧客と実際の開発者とのコミュニケーションパスが長くなり、思い違いが生じるリスクを増幅させてしまう。責任の所在が曖昧になりやすいこともわかるだろう。

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