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システム開発の「不都合な真実」を乗り越えよ ITジャーナリスト 田中克己氏

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開発費は「月額料金」として支払う

 クラウドインテグレーターとの契約面の特徴は、初期投資が不要なことだ。そこは成果報酬型の契約形態に似ている。

 クラウドインテグレーターも、顧客が望むシステムをクラウド上に作る。従来ならそれを顧客に納品するところだが、そうではなく、クラウドインテグレーターのサービスとして月額料金を支払ってもらう契約にする。開発費をもらって、ハードウエアやソフトウエア、ネットワークなどITインフラの利用を月額料金でもらう形態もある。いずれの方法も、顧客はシステム運用の負担がなくなる。

――開発費の支払いが楽になるのは良いが、「こんなシステムが欲しい」という曖昧な要求を外部の人に正確に伝える難しさは残る。

 確かに、これまで述べてきたコミュニケーションの無駄が根本的に解消されるわけではない。だが、システムを稼働させないとクラウドインテグレーターの売り上げが立たない点は成果報酬型と同じなので、のんびりと開発することはない。「最初は、本当に必要な機能だけに絞り込んだシステムをクラウド上に作り、それを実際に動かしながら顧客と内容を確認する。問題がなければ業務で使い始める。その後、必要な機能だけを段階的に追加していく」という作り方をするクラウドインテグレーターが多いようだ。

 「こういうシステムが欲しい」と机上で議論している間は非常に曖昧なものなのだが、実際に動くシステムを目の前にして触ってみると、顧客側も具体的なイメージをつかめるようになる。本当に実現すべきものが早期に明確になるとともに、「こうしておかないと後で困るな」といった気づきも得られたりするので、作業の手戻りが少なくなる。その一方で、「最初は重要だと思っていたのに、実はさほど重要ではなかった」と気づくこともある。これらがはっきりすれば、システムをより早く安く作れるだろう。

 このように、システム開発作業の早い段階で「馬鹿の壁」(※)が取り払われれば、コミュニケーションはずっと円滑になり、「早く安く」が可能になるわけだ。

(※)「馬鹿の壁」の詳細はインタビュー前半の『なぜ遅くて高い? 企業システム開発の「不都合な真実」』を参照

 実は、このような開発方法は決して目新しいものではなく、昔からある。だが以前と違って、クラウド上にすばやくシステムを作れるツールがあり、顧客とITベンダーがいつでもどこでも動くシステムを共有できるようになった。これが両者のコミュニケーションの距離を縮め、生産性を高めている。

――クラウドインテグレーターもまだメジャーな存在ではないようだが、ほかの選択肢も含めて、今後のシステム開発はどの方向に進んでいくのか。田中さんの見通しは。

 内製化の流れは、大企業から中堅・中小企業へと広がっていくだろう。もちろん専門性の高い技術を導入するときや人手が足りないときには、引き続きITベンダーに依頼することになる。

 企業向けクラウドサービスで充足できる部分は積極的に取り入れていくだろうが、既製のサービスでは実現できない部分については自社開発するかITベンダーに発注していくのではないか。クラウドインテグレーターは、こうした企業の良きパートナーになると思う。

キーワード:経営、企画、経営層、管理職、技術、経理、イノベーション、ICT、IoT、AI

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