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なぜ遅くて高い? 企業システム開発の「不都合な真実」 ITジャーナリスト 田中克己氏

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 「システム開発は費用が高く、完成までに思ったより長い期間がかかる」――。ITでビジネスのスピードを上げたいのに、情報システムを発注する顧客から聞こえてくるのは、こんな声だ。

 なぜシステム開発には時間とお金がかかるのか。そこには、IT業界で広く認識されながら、顧客には黙っておきたい「不都合な真実」が潜んでいる。30年以上もIT業界の動向を追い続けてきたITジャーナリストの田中克己氏は、IT業界の健全な発展のために改めて問題を指摘する。(日経BizGate)

「顧客の言う通りに作る」がそもそもの問題

――企業が情報システムの開発を外部のITベンダーに発注する場合、開発費用が高くなりがちで、完成までに結構長い期間が必要となる。そこに不満を持つ企業は以前から少なくなかった。システム開発に時間とお金がかかるのは、なぜか。

田中 克己(たなか かつみ) 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事。30年にわたりIT産業の動向をウォッチし、現在はITpro「針路IT」などを連載中。主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(ともに日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)がある。

田中 克己(たなか かつみ)

 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事。30年にわたりIT産業の動向をウォッチし、現在はITpro「針路IT」などを連載中。主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(ともに日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)がある。

 いろいろな問題があるが、最も大きなものを挙げるなら、ITベンダーが「顧客の言う通りにシステムを作ること」に難しさがあるためだ。情報システムは「形のない、曖昧なもの」であり、それを外部の人に正確に伝えるのが難しいからともいえる。

――伝言ゲームの最初と最後で内容が食い違ってしまうようなものか。

 似ている。もちろん、内容が正確に伝わるように、顧客もITベンダーも分厚い要件定義書(※)や設計書を作成して意思疎通を図ろうとする。しかし、そもそもかなりの情報を伝えなければいけないし、複雑な内容かもしれない。誤解や伝達漏れも出てくるから、そのたびに修正しなければいけない。しかも修正の手間は、開発作業が終盤に近づくほど大きくなる。こういう生産的でない作業が非常に多い。だから時間もお金もかかってしまう。

(※)どういうシステムを作るのか、どういう機能や性能が必要なのかを詳細に記述した文書

 IT業界の人は、こうしたコミュニケーションの手間が極めて大きく、開発期間を長引かせてしまう一因であることを知っている。だが、そうしないと仕事にならないから、文句を言わずにやっている。契約の仕方によっては、そのほうが儲かるから、という面もある。

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