伊勢神宮の式年遷宮という"壮大な伝承システム"
最後に、話が少しわき道にそれてしまうかもしれないが、園田氏は共通理解に関して、興味深い例を挙げる。
昨年、伊勢神宮の式年遷宮(※)と出雲大社の遷宮があり、園田氏は両方にお参りして、社殿などの建て替えの様子を見学してきた。その中で、「これはすごい」と感じたのは、数十年の時を経て技術、知識、理解を伝承するシステムだったという。
(※)伊勢神宮の式年遷宮は、20年ごとに社殿や装束、宝物などを寸分たがわぬ新しいものに作り替え、神さま(天照大神)に新しい社殿へ移っていただくという儀式。伊勢神宮で最も重要な祭。2013年の第62回式年遷宮にかかった費用は約550億円とされる。
伊勢神宮の式年遷宮は約1300年前から続いているが、伊勢神宮では20年に1度、出雲大社ではおよそ60年に1度しかない。ということは、20年ないし60年の間にどうやって後継者を育成し、式年遷宮の精神と正しいやり方を維持しつつ伝達していくかが重要になる。それがシステムとしてしっかり組み立てられていることに園田氏は気付き、感動した。
多額の寄付を集めることにはじまり、遷宮に使う良質の木を育て、宮大工の技術を伝承し、参拝者に広報宣伝するところまで含めたすべてだ。何十年もかけて木を育てるところからナレッジが必要になり、20年に1度ないし60年に1度、きちんと社殿などを作り直す知識が1200年も維持されている。これはすごいことだと。
式年遷宮の伝承システムを知った園田氏は、こう考える。「企業にとって大事なことは、『リアルタイムに何かを共有すること』と同じぐらい、『根底にある理解をきちんと伝達していくこと』だと感じた。何十年もの間トップカンパニーでいられる企業は、それができているからだと思う」。
逆に言うと、そういうシステムがあればスピードが付く。「そこまでの共通理解があれば、最後の味付けの部分だけを社員が共有するだけで、あとは暗黙知でコトが進む。ここの暗黙知の部分を、どうやって社内で共有するようにするかを、ウフルとしてもチャレンジしているし、お客様に対しても、良いシステムを作って展開したいと考えている」(園田氏)。
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