不祥事は、誰が起こすのか

不祥事の兆候や原因をデータであぶり出す 植村修一氏

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 現在、ベイジアンモデルは、ITの世界でデータ処理のために欠かせない存在になっています。その代表的な例が、検索エンジンだと言われています。また、メール・サーバーのスパム(迷惑メール)フィルタにも応用されています。スパムフィルタは、スパムメールであることをあらかじめ特定することなく、ある単語を含むメールは高い確率でスパムメールであるという仮定からできており(事前確率)、これを繰り返しながら事後確率を高めていきます。

 アメリカのサイエンス・ライターであるシャロン・バーチュ・マグレインの『異端の統計学ベイズ』(富永星訳、草思社)には、ベイジアンモデルの苦難の歴史が詳しく書かれています。その中で、20世紀後半にこのモデルが注目された例として、1966年、4つの水爆を積んだアメリカ空軍のB-52爆撃機の事故により、水爆が地中海に落下した事件や、1968年、アメリカ海軍の原子力潜水艦スコーピオンが大西洋で沈没した事故が挙げられています。いずれの場合も、事前確率と条件付き確率の設定と、実際の探索の反復によって事後確率(ある海域に水爆や原子力潜水艦が存在する確率)を高めていき、ついにその場所を突き止めました。

 ベイジアンモデルの最大の特徴は、条件付き確率という、「仮定」を置くことにあります。そのため、「主観確率」という名称も用いられ、データの頻度を何より尊ぶ数理統計学派からは、長らく異端視されてきました。今まさに、この構図が覆ろうとしているわけです。不祥事や事故など、いわゆるオペレーショナルリスクの分野においても、ベイジアンモデルの活用の余地が大きいのではないでしょうか。

 ベイジアンモデルの効用については、アメリカで有名な統計専門家のネイト・シルバーによる『シグナル&ノイズ』(川添節子訳、日経BP社)でも、情報が増えるビッグデータの時代にこそ、少しずつ不確実性を減らす漸進的アプローチであるベイズ法がふさわしいと述べています。ベイズ法とは、トライアル・アンド・エラーの、謙虚なアプローチです。

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