不祥事は、誰が起こすのか

権威勾配が急すぎると、粉飾そして破綻という大事故につながる 植村修一氏

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外からのチェック、内からのチェック

 2013年秋からしばらく話題となった、みずほ銀行の一部提携ローンにおける反社会的勢力との取引に関しては、旧3行統合に起因するグループ全体の体質から、9月に金融庁がみずほ銀行に対して業務改善命令を発出した理由のひとつとされる、問題に関する情報が担当役員止まりとなっていたとされる点(事実はそうではなく、結果的には金融庁も誤認した可能性)まで、様々な観測、報道がなされました。

 そして、同年10月8日、第三者委員会である「提携ローン業務適正化に関する特別調査委員会」が設置され、10月28日に調査報告書が提出されました。わずか3週間弱という調査期間については、やや拙速であり、中間報告をしたあとに時間をかけて最終報告をしたほうがよいのではとのコメントが、当時から聞かれました。実際、そもそものきっかけが金融庁の業務改善命令であったことから、内容や期間に制約が加わったことは認めますが、真の原因(「真因」)を探り、それに基づき抜本的な対策を求めようという気迫が、率直なところあまり感じられない報告書でした。

 報告書で本件の原因とされたのは、提携ローンも自行貸付債権であるという意識や、反社会的勢力との関係遮断の重要性に対する認識が欠けていた点のほか、行内における認識や情報の共有・伝達、連携の不足という、大企業病特有の要因です。その中で私が驚愕したのは、内部監査に関する以下の記述です。

「監査員が(本提携ローンの反社管理を行っていた)コンプライアンス統括部渉外室に証跡の開示を求めるも、渉外室からかかる開示を受けることができなかったので、個人業務部から提出を受けたという経緯がある」「渉外室は、ローン業務管理態勢のテーマ監査において業務監査部からの資料開示の求めに応じていないなど、ややもすると閉鎖的な側面もあった」(下線部筆者)

 何十年も前ならともかく、2011年夏に銀行で行われた内部監査において、被監査部署による資料の提出拒否がなされ、それが通ったなど、本当に信じがたいことでした。例外中の例外であることを心から願うとともに、報告書中の「ややもすると閉鎖的」とか、2013年10月に当行から公表された業務改善計画で示されている、内部監査受検時における「協力的な姿勢」という表現にも、違和感を抱かざるを得ません。組織に対する外からのチェックには限界があります。内からのチェックを十分活用しないと、不祥事はまた起きます。内部監査はそのための最後の歯止めです。

植村修一 著 『不祥事は、誰が起こすのか』(日本経済新聞出版社、2014年)第3章「落とし穴にはまる企業」から
植村 修一(うえむら しゅういち)
大分県立芸術文化短期大学教授。1956年福岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、日本銀行入行。調査統計局経済調査課長、大分支店長、金融機構局審議役などを経て退職。民間会社や独立行政法人経済産業研究所に勤務の後、2013年より現職。著書に、『リスク、不確実性、そして想定外』『リスクとの遭遇』などがある。

キーワード:経営、企画、経理、経営層、人事、人材、働き方改革、管理職、ものづくり

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