不祥事は、誰が起こすのか

歴史に学ぶ――なぜ不祥事は起こるのか 植村修一氏

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日本軍の特徴、日本人の特徴

 日本の組織や企業において事件や事故が発生し、それに関する検証が行われるとき、そこに何か日本人や日本的なるものを見出すことができるでしょうか。ちなみに、約70年前の太平洋戦争は、言うまでもなく、歴史に残る大きな出来事だっただけに、これに関係した日本人論や日本型組織論は、当時から今日に至るまで、数多く出版されています。『菊と刀』(ルース・ベネディクト著、長谷川松治訳、講談社学術文庫)、『私の中の日本軍』(山本七平、文春文庫)、『失敗の本質―日本軍の組織論的研究』(戸部良一ほか、ダイヤモンド社及び中公文庫)などがその例です。最近では、埼玉大学の一ノ瀬俊也准教授の『日本軍と日本兵』(講談社現代新書)があります。

 同書は、ほかにない試みとして、「米陸軍軍事情報部が1942~46年まで部内向けに毎月出していた戦訓広報誌Intelligence Bulletin(情報公開)に掲載された日本軍とその将兵、装備、士気に関する多数の解説記事などを使って、戦闘組織としての日本陸軍の姿や能力を明らかにしてゆくこと」を行っています。部内プロパガンダもあるでしょうから、完全に客観的とは言えませんが、アメリカ軍という、日本人以外の第三者の目を通した日本陸軍論には興味深いことが記されています。

 そこで描かれているのは、単に非合理的、精神主義的に無駄な戦闘を繰り返していたわけではないという、日本陸軍が善戦した姿ですが、一方で、日本兵の短所として、自分でものを考えることが苦手であること、したがって、決められた計画を細部まで実行することはできるが、急速に変化する事態や予期せざる事態にうまく対処できないことが挙げられています。

 集団志向、危機管理が苦手というのは、現在もときどき言われることです。日本人である以上逃れられない特徴であるとするならば、不祥事への対策を考える際にもこれを前提としなければいけません。

植村修一 著 『不祥事は、誰が起こすのか』(日本経済新聞出版社、2014年)第2章「偽装事件は平安時代にも――歴史から学ぶ」から
植村 修一(うえむら しゅういち)
大分県立芸術文化短期大学教授。1956年福岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、日本銀行入行。調査統計局経済調査課長、大分支店長、金融機構局審議役などを経て退職。民間会社や独立行政法人経済産業研究所に勤務の後、2013年より現職。著書に、『リスク、不確実性、そして想定外』『リスクとの遭遇』などがある。

キーワード:経営、企画、経理、経営層、人事、人材、働き方改革、管理職、ものづくり

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