不祥事は、誰が起こすのか

歴史に学ぶ――なぜ不祥事は起こるのか 植村修一氏

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「奨励の文化」で最悪だった国は......

 第二次世界大戦や太平洋戦争に関する著作は毎年出続けていますが、最近出版された『第二次世界大戦 影の主役』(ポール・ケネディ著、伏見威蕃訳、日本経済新聞出版社)は、新たな視点から大戦を描き、企業経営や組織運営に役に立つ書です。

 国際政治経済や戦略史を専門とする彼が行ったのは、有名な軍事作戦や戦争指導者、個々の卓越した兵器や技術などに焦点を当てるのではなく、民間と軍の両方の小規模な集団や組織の創意工夫がいかに問題解決に役立ったか、その結果が戦争の帰趨に影響を与えたかを立証することでした。いわば、ソリューションビジネス的発想と、それを担う人々や組織がなければ、経営戦略の実現や経営資源の十分な活用はできないということです。

 彼が取り上げたのは、ドイツ海軍のUボートを探知・撃沈し、米国からの輸送船団が無事に大西洋を渡れるようになるまでの、思いつきに端を発する様々な取り組みや、連合国空軍がドイツ上空での制空権を確保するのに決定的な役割を果たした戦闘機が、実戦配備され運用されるに至るまでの小さな集団の努力といった、1943年から44年にかけての5つのエピソードです。

 それらから導かれたことは、成功した体制には、上層部、中間層、末端の間に、よくできた情報や連絡の循環(フィードバック・ループ)があり、進取の精神、新機軸、創意工夫を活発にしたために成功したこと、また、そういう体制は、問題を解決する人々を奨励して、容易には解決できそうにない難問に取り組ませたということでした。

 とくに、中間層の人々が自由に実験したり、着想や意見を口にしたりして、旧来の組織の垣根を取り払うことや、問題解決にいそしむことを容認し、奨励する文化の重要性を強調します。残念なのは、この点で日本は最悪だったと評されていることです。奨励の文化がないところは、内向きで柔軟性を欠き、外部環境の変化についていけません。不祥事の種がまかれる原因ともなります。

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