「論語と算盤」と現代の経営

『論語と算盤』は私の経営方針に合った理想とするものだった 守屋淳氏

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 安田善次郎さんは、渋沢栄一さんに考え方が少し似ているなと思います。やはり金融一筋で、金融を正業としていました。特に、金融の大原則である、「お客さんに対して貴貧の差別を絶対にしない」ということが、今でも銀行の規則に書いてあります。これはわれわれ金融を扱っている人間の、第一原則なのです。身なりが良くないからと、窓口に来ても、ぞんざいな応対をする。逆に、偉そうでお金持ちらしいと、奥に通してお茶を出すといったことが一時期あったわけです。

 しかし、みな平等だというところに銀行が存在している、ということを、もうあの時代に安田善次郎さんは言っています。自由平等といいますか、人間味のある平等っていうところで、渋沢栄一さんと相通じていると思いますね。晩年、『論語』にいった渋沢栄一さんとは違い、安田善次郎さんは仏教の方へ行きました。一汁一菜といった非常に質素な生活をしていました。それでも東京大学にある安田講堂を含めて、たくさんの社会貢献をしてきました。

 渋沢栄一さんを、岩崎弥太郎さん、大倉喜八郎さん、安田善次郎さんといった方々と比較すると、今述べたような違いがあると思います。ただし私が思うには、渋沢栄一さんはそういうのを全部飲み込みつつ、何かこう一種の余裕を持ちながら全体をいつも見ていたと思います。そのうえで、「正しい道はなにか」ということを見ながら、経営を生きていった方だと思います。

 こういう比較というのは、今の経営者にも通じていると思いますよ。利益一辺倒で考えている社長さんと、社会への還元を常に考えている社長さんがいると思います。

 では、どうやって公益と私益をバランスよく、企業家としてやっていけばいいのか。この疑問に、渋沢栄一さんはよく答えているのではないでしょうか。つまり、『論語と算盤』によって答えればいいのではないか、と私は思っています。

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