「論語と算盤」と現代の経営

『論語と算盤』は私の経営方針に合った理想とするものだった 守屋淳氏

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 「実行」や「信頼」といった現代が直面する難問をもとに、渋沢栄一や「論語」の教えを実践している経営者の方々にインタビューしました。評論家や学者といった立場からの声ではなく、生々しい現場を預かる責任者の声として、きわめて示唆に富んでいると筆者は考えます。混迷の続く時代を照らすヒントとして、本連載を活用して頂ければ幸いです。

 最終回の今回は、三浦藤沢信用金庫(現・かながわ信用金庫)理事長の平松廣司さんにお話を伺いました。

 なお、本文に登場する人物の年齢や肩書き、数値データなどは原則としてインタビュー当時のものですが、プロフィールは2013年6月現在の情報を表記しています。

知・情・意のバランス

守屋 まず、平松さんが『論語と算盤』を初めて読んだきっかけを、教えてください。

<FONTBOLD />平松 廣司(ひらまつ ひろし)</FONTBOLD></p><p> 1949年横須賀市生まれ。2008年三浦藤沢信用金庫理事長に就任。神奈川県信用金庫協会副会長、横須賀商工会議所副会頭等を努める。横浜市立大学大学院修士課程修了。修士論文のテーマは「渋沢栄一における企業の社会的責任」。</p><p>

平松 廣司(ひらまつ ひろし)

 1949年横須賀市生まれ。2008年三浦藤沢信用金庫理事長に就任。神奈川県信用金庫協会副会長、横須賀商工会議所副会頭等を努める。横浜市立大学大学院修士課程修了。修士論文のテーマは「渋沢栄一における企業の社会的責任」。

平松 ちょうど4年前に理事長を拝命して、専務から理事長になりました。そのときに、今の自分とは世界が違ういろいろな方々にお会いすることになり、金融の問題についてもその捉え方や濃淡の度合いがだいぶ違うな、と感じました。同時に何かが不足しているなと思いました。

 私が前から考えていたのは、夏目漱石の『草枕』なんですね。冒頭に出てくる、

「知に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角人の世は住みにくい」

この考え方が、トップになったときのバランス感覚として一番向いているのではないかと常に念頭にありました。知識ばかりでは職員や役員を引っ張ってはいけないし、お客さんと接しても、本当の信頼は得られないと思います。だから、やはり情も大切だろうと思うのですが、だけどその情を前面に出していくと、それに流されて、きちっとした経営はできない。感覚的で、お人好しの経営になってしまう。

 例えば、大事な皆様方の預金をお預かりして、それを貸出として運用していくとき、情で判断を誤ることはよくありません。経営者として最も留意しなければならないことです。その知と情とを考えたときに、知が「算盤」、情が「論語」なんじゃないかなという発想をしました。

 もう1つ、「意地を通せば窮屈だ」とあります。この「知」「情」「意」の3つのバランスを保っていれば、安定的に職責を全うできるのではないかな、という考え方を理事長になったときに持ちました。

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