「論語と算盤」と現代の経営

今は『論語』の解釈を考え直さなければならないタイミング 守屋淳氏

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 また一方、本当にチェックしたいのであれば、する側には相当の知識が要求されます。最低限の法律知識、会計知識がなければ、財務諸表もリスクも読めません。そんなの要求されても無理ですよね。じゃ、どうするかと言うと、結局は経営陣に任せるしかないんですよ。任せた結果、不幸にして独裁になる場合もあるでしょう。従って、コーポレートガバナンスで留意すべき唯一の点は、トップを交代させる装置を作ることだと思うんです。

 まず信じて任せる、ダメだったら変える。これが基本だと思います。信じないところから制度を作ろうとするから、やたらと規制範囲を広げてがんじがらめにして訳がわからなくなっていると思うんですよね。信じていないならそもそも任せてはダメなんです。そこが割り切れていない。それがまず1点目ですよね。

 2点目は、信じることそのものが希薄になり過ぎていることですね。今の社会のあらゆる面で感じられ、そこはもっと考えなければならないと思います。いろんな仕組みの中に、まず信じるという観点を入れておかないと。他の分野では情報にノイズがあるという言い方をしますけど――それぞれの学問によって単語が違うんですけど――要するに信じられるかどうかですね。そこを根本に置くことが非常に重要です。となると、信じられるように各人が努めなければならない。

 今の道徳、仁だとか道だとかいう話もそうですが、ずっと掘り下げていきますと、信じられるに足る人になることが極めて大切なことがわかります。どういう修行をしたら徳が身につくかですがね、私は全くできていないのですけれども、これもまあ、自制をすべしというのが『論語』の中の至るところにあります。どれももの凄く勉強になりますが、極めて具体的なのもあって面白い。若いうちは色に気をつけなさいと、で、ちょっと経ったら喧嘩しないようにしなさいと、もう少し経ったら守りに入るからまずいよという、そんなくだりもありますね(※3)。人を見る眼、トップを見る眼としても極めて重要だと思いますね。

 やはりその都度その都度、その人が抱える問題が違いますので。さすがにこれだけ風雪に耐えた教えですから、正鵠を射ています。やっぱり、ドキッとしますね。

(※3)孔子曰わく、君子に三戒(さんかい)あり。少(わか)き時は血気未だ定まらず、これを戒(いまし)むること色に在り。其の壮なるに及んでは血気方(まさ)に剛なり、これを戒むること闘に在り。其の老いたるに及んでは血気既に衰う、これを戒むること得(とく)に在り。(季氏篇)

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