「論語と算盤」と現代の経営

社会貢献になる義を思い切ってやる勇を持つ 守屋淳氏

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 まず、「組立業(アッセンブル)」というのがあります。今ちょっと賢い人は、秋葉原に行ったら、部品を全部集めてコンピュータが作れます。部品がみな売られていますから。

 IBMがコンピュータの王者だったのに、値段の問題で自分でコンピュータを造れなくなりましたね。それは組立業でやろうと思うなら、みなが高い給料をもらっていてはできないからです。中国とか韓国とかで造ったほうがはるかに安い。それと同じことが液晶でもLEDでも起こるでしょう。太陽電池でも、本当の根幹技術は日本だったのに、いつの間にか、実際見かけ上の利を得ているのは、全部海外に移行してしまっている。私たちは、これからやるものに関して、同じパターンに陥りたくないということで秘策を練っているところです。例えば、電気自動車とかリチウムイオン電池とかを二の舞にはしないと。

 技術のもう1つの種類である「素材業」の方からいいますと、物つくりの本当の真髄は組み立てではありません。素材の開発というのは、組立業と違って農業と同じなのです。種をまいて、水をかけて、台風が来たらちゃんと防御して、それで実がなって刈り取る。これは何10年単位の開発です。こういうロングタームの開発をやる素材産業は、日本に残しておけばいいだろうと思います。

 「うなぎのたれ」ですよ。うなぎの秘伝のたれは自分で持っています、と。そのかわり、いいたれを使えば、中国産のうなぎでも、おいしいうなぎができます。焼き方と焼く道具はライセンスしてあげます。ただし、「うなぎのたれ」は自分で持っています、という。そうすると、本当の技術は日本で持っているけども、実際の加工はそれなりのところでやればいいとなります。日本の中で組立業までやったら高くて、今の日本の文化水準では成り立たない。「うなぎのたれ」は、自分で持っていたらいいのではないかと思います。

 この「うなぎのたれ」を作るのを、非常にロングタームで考えるという企業風土が残っていれば、目先の利に走ることにはならないと思います。すぐに技術が全部取られて、あちら相手で作るというようなことにはならない気がしています。

守屋淳 編著 渋沢栄一記念財団 監修『「論語と算盤」と現代の経営』(日本経済新聞出版社、2014年)2「『論語と算盤』は可能なのか」から
守屋 淳(もりや あつし)
作家、中国古典研究家。1965年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大手書店勤務を経て、現在は中国古典、主に『孫子』『論語』『老子』『荘子』『三国志』などの知恵を現代にどのように活かすかをテーマとした執筆や企業での研修・講演を行う。主な著書・訳書に『現代語訳 論語と算盤』(ちくま新書)、『ビジネス教養としての「論語」入門』(日本経済新聞出版社)など。

キーワード:経営、企画、人事、経営層、人材、研修、働き方改革、経理、グローバル化、ESG

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