クロネコ遺伝子-生き続ける「小倉昌男イズム」-

「不在時に配達してほしいか?」――お客様が喜ばないのは会社が悪いから 岡田知也氏

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 私が、一般的には法人営業部といわれるような、本社組織にいた時代の話です。

 この組織は、スーパーや百貨店、季節特産品など、大量に宅急便を出して(利用)いただく荷主(お客様)に対応していました。ある大口のお客様の獲得ができ、報告にいったときの話です。小倉氏はこう言われました。

『特販課は頑張っていますね。荷物が増えることは「良い循環」になりますからね。

・荷物が増えれば、セールスドライバーを増員できます。

・セールスドライバーを増員すると、担当地域が小さくなり、さらにきめ細かいサービスが提供できます。

・きめ細かいサービスが提供できれば、お客様が喜んでいただき、また、荷物が増えます。

・荷物が増えることは「良い循環」につながる、ということになります。

 「良い循環」になるために特販課はさらに頑張ってもらいたいですね。......』

 経営学では、「企業は継続していくのが前提で考える」というのを、「ゴーイングコンサーン」と横文字で表現します。少し格好いい呼び方です。

 小倉氏は、この永遠的な発展を継続していくためには、会社は「良い循環」にならなくてはならないと、教えていたのです。小倉氏らしい、一般社員でもわかる、経営用語です。いつもながら、このような言葉のセンスは抜群でした。

 ヤマト運輸社内では誰でも知っている「サービスが先で、利益は後」という言葉も、循環を表しています。良いサービスを提供すれば、必ず利益はついてくる。利益が出れば、また、良いサービスが提供できるようになる。という循環を諭した言葉です。

 売上目標や利益計画、コスト削減計画など、会社にはさまざまな目標があり、それぞれの目標を達成するために、さまざまな判断をしていかなくてはなりません。

 小倉氏はこの点で、何かを達成するという終着点だけを見てはいなかったのです。目標の達成は通過点の1つに過ぎず、絶えず世の中の人たちが笑顔で暮らす、幸せな社会。そんな社会が実現するために会社は存在すると考えていました。荷物を送る人、受け取る人の気持ちを乗せて、日本全国をめぐる宅急便は、世の中を「良い循環」にするための潤滑油になっていきました。

 何ごとも判断するうえで最も大切にしていたものは、「良い循環」につながることかどうか。わかりやすい経営哲学です。

岡田知也 著 『クロネコ遺伝子-生き続ける「小倉昌男イズム」-』(日本経済新聞出版社、2014年)1「こだわり続けた原点」から
岡田 知也(おかだ ともや)
1983年、慶應義塾大学法学部卒業後、ヤマト運輸入社。宅急便創始者・小倉昌男氏のもと、経営理論を学ぶ。郵政民営化時に旧郵政公社に転職。後に、郵便事業で集配営業推進部長などを歴任。その後、マイルブリッジを設立し代表取締役就任、関連会社マイルエキスプレスの代表も務める。配送のラストワンマイルを大切な顧客接点と考え、上場企業から中堅企業までを対象に配送員改革、デマンドチェーン構築などの支援をしている。ペンネーム青田卓也として『社長でなくても変革は起こせる!』(日本経済新聞出版社)、『【ビジュアル図解】宅配便のしくみ』(同文舘出版)の著書2冊があるほか、専門誌、一般紙への寄稿、講演なども行う。

キーワード:経営、企画、営業、経営層、管理職、マーケティング、人材、研修、働き方改革

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