クロネコ遺伝子-生き続ける「小倉昌男イズム」-

「やさしく言えるから管理職」――できないのは自らが理解していないから 岡田知也氏

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 宅急便を始める前、小さな荷物を送るにはいろいろな制限があり、便利とはいえませんでした。そこで、誰もがわかりやすく簡便にして、発売したのが宅急便です。ですから、送るときの手間や送料(運賃)以外に費用がかかることには、満足していなかったのだと思います。何かの商品やサービスを提供(販売)するときに、お客様に付加的な作業や追加費用を請求することは望ましい姿ではない、ということです。

 たとえば段ボールを販売するのであれば、段ボールだけの費用をお客様に明確にお知らせし、納得いただいたらご購入いただく。さらに、「段ボールのふたは別料金になります」「段ボールのみのお届けは有料になります」というような商売の仕方もよくない、という気持ちがあったのです。

 蕎麦屋に入り、蕎麦を食べようとしたら、「割り箸は有料です......」と言われたら、折角の蕎麦が美味しくなくなるではないか、という考え方でした。

 宅急便がお客様の不便・不都合を解消し、成長を続ける原点は、この小倉氏の『蕎麦屋の割り箸......』という言葉に表現された遺伝子があるからです。宅急便は食べ物ではありませんから国民食とはいいませんが、今やすっかり社会に溶け込み、国民的サービスとなりました。日本全国、多くの人が利用する宅急便は、「お客様にわかりやすい、シンプルなサービス」を今も目指しています。

 お客様がある商品やサービスを知り、納得した金額で購入、利用する。そこには、お客様に手間をかけさせる付加作業や追加費用があってはいけないのです。900円の天ぷら蕎麦を食べに店に入ったら、店を出るときのお勘定は、あくまで900円なのです。

 実は、小倉氏の遺伝子はそれだけでは終わりません。店を出たお客様には、900円以上の価値、満足を得ていただきたいと考えます。そのための労は惜しみません。美味しい蕎麦をつくり、わかりやすいシステムで食べてもらう。宅急便も同様です。高い品質の輸送サービスを、わかりやすいシステムでご利用いただく。これが小倉氏の遺した、わかりやすい遺伝子です。

 私は今も、お蕎麦屋さんで割り箸を見る度に、この言葉を思い出します。

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