クロネコ遺伝子-生き続ける「小倉昌男イズム」-

「失敗を他人のせいにしない」――その段階で自らの成長はない 岡田知也氏

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 そんななかにいたからでしょうか、新人の私は、なんとなく職場の仲間と馴染めない自分を感じていました。やがて、働きやすさに負け、外出時以外は作業着で仕事をするようになったのですが、やはり、それでも、職場の人たちとの間に一定の距離感を感じていました。何か本音で話しかけてもらえていないような、そんな気持ちを、いつも持って働いていたのです。

 ある日、見かねたのでしょう。作業着で仕事をしている私に上司が話しかけてきました。

「そろそろネクタイはずしたらどうだ」

 私は

「え! ネクタイですか? ネクタイなどしていませんが......?」

思わず声に出しました。すると続けて上司が言いました。

「ちがうよ。心のネクタイだよ。心のネクタイ......。心のネクタイをはずさないと、本音で話し合えないことがあると思うよ。キミは心にネクタイをしているように見えるけど......」

 私は、この言葉がなぜか頭に残りました。この言葉の意味をずっと考えていました。考えさせられました。「心のネクタイって何だ? そんなものあるのか?」。さまざまな思いが頭を巡りました。いつも「心のネクタイ」という言葉が頭に残っていたのですが、結局自ら答えが見つからず、ある日、上司に聞きました。

 先日、言われた、心のネクタイってどういう意味ですか?

上司 ああ、あのことね。心のネクタイって言ったのは、もしかすると、キミは、少しだけ、自分だけが別の存在、って考えていないかな、と思ったのだよ。若いときにはだれでもあることだけどね。だけど、いつも、他人との間に一線をひいていると、周りの人も本音で話しづらいのではないかな、と思っただけだよ。

 私は、若い男子にありがちな自己顕示欲が強かったのだと思います。その後、私はその言葉を受けて、間違った自尊心を捨てる努力を始めました。すると、やがて、職場でも受け入れられていく自分がわかるようになったのです。

 「心のネクタイをはずしたらどうだ」というこの言葉は、小倉昌男氏のやさしいクロネコ遺伝子から生まれた言葉だったのです。たとえ上司といえども、部下に対して高圧的にモノを言ってはいけないのです。諭さとすように、また、自立していけるように、大切に言葉を選ぶ遺伝子です。当時の上司も、私に対して言葉を選んでいたのです。

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