クロネコ遺伝子-生き続ける「小倉昌男イズム」-

「需要など存在しない」――必要なのは新しい世の中をつくること 岡田知也氏

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お客様が喜び会社が損することをやるか

 ある日、本社で行われた会議での話です。役員から支社長にいたるまで、幹部が集まった会議でした。小倉昌男氏は、新任の営業開発部長に向けて言葉を発しました。

『営業開発部長に聞きます。お客様が喜び、会社が損すること。営業開発部長として君はやる(実行する)かね』

 この唐突とも思える質問に、営業開発部長は答えに窮しました。当の部長が会議終了後、私に話してくれました。

「いやー、参ったよ。諸先輩(役員や支社長)がいる会議で、着任の挨拶をしたときだったよ。着席もしていない私に、『営業開発部長に聞きます。お客様が喜び、会社が損すること。営業開発部長として君はやる(実行する)かね』と聞かれたんだ。当然、予想もしていない質問だったので、正直、どう答えて良いかわからなかった。会社が損をすることはやりません、と素直な答を期待しているのではないだろう。しかし、いくらお客様に喜んでいただいても、会社が損することをします、という新入社員でもわかるような答を出すわけにもいかない。本当に、心臓の鼓動が聞こえるくらい緊張し、考えたよ。ほんの、数10秒だと思うが、私(営業開発部長)にはとても長い時間、時が止まっていたような思いだったよ」

 結局その会議では、若き営業開発部長は答を発することができませんでした。

 その営業開発部長の姿を見ながら、小倉氏は静かに口を開きました。

『お客様が喜び、会社が損すること。基本はやる(実行する)のです。そして、会社が損しない仕組みをつくるのが君(営業開発部長)の仕事です』

 なぜ、小倉氏は、新任役職者(営業開発部長)の着任挨拶の場で、この質問を選んだのでしょうか。偶然、思い付きで話しただけなのでしょうか。そうではありません。小倉氏は、あえて会社幹部が集まる会議で、本社の中核をなす役職者に基本的な考え方を示したのです。小倉氏がとても大事にしていた真理だったからです。

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