クロネコ遺伝子-生き続ける「小倉昌男イズム」-

「需要など存在しない」――必要なのは新しい世の中をつくること 岡田知也氏

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 彼(小倉氏)の頭の中では、「お客様がこうしてほしい」「こんなサービスがあったら良いな」というような具体的なもの(顕在化したニーズ)は、需要とは呼ばなかったのです。それではいったい、彼の言う需要とはどんなものだったのでしょうか。

 彼の言う需要とは、新しい世の中なのです。世の中自体が彼にとっての需要でした。こんな世の中になれば良いと思っているお客様の漠然とした思いを、需要と呼んでいました。その需要を実現できる手段が製品やサービスであるという考え方でした。

 スケールの大きな話ですが、まさしく、宅急便は世の中を変えました。宅急便が生まれた時代にはあまり主流ではなかった通信販売が、現在では欠かせないサービスになっています。宅急便で食材を送ってもらい、その食材を使い調理し、顧客に提供している飲食店は少なくありません。まさしく、社会基盤(インフラ)になりました。宅急便という手段が新しい世の中を生み出したのです。これが小倉氏が言う、需要をつくり出した、ということになります。

 この、「需要をつくり出す」という考え方は大切なクロネコ遺伝子の1つです。

 ヤマト運輸は宅急便の開発のほかに、どんどん商品開発を行ってきましたが、この考え方はずっと受け継がれています。「生活を豊かにしていきたい」――。社訓や企業理念などにも表現されている思想です。人々がどんな世の中を望んでいるのか、こうした広い視野に立って考えるのが需要をつくるということだ。新しい世の中が需要。新しい世の中など今は存在しない。だから我々がつくり出していくのだ。小倉氏は考えていました。

 第一線で働くセールスドライバーたちも、荷物のお届け先の暮らしを支えている、という気持ちを忘れず仕事をしています。お届けした荷物で暮らしが豊かになっている――この自負心が元気の源になっています。社長として見つめ続けていたものは、笑顔のあふれる世の中だったのです。

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