経済学的にありえない。

五輪やW杯、どれだけ開催国の経済に効くか 佐々木一寿氏

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 ちなみに、経済成長が進めば、途上では格差は大きくなるものの、先進国までに達すればなかば自然に縮まるという意見がこれまでは主流の考え方でした(サイモン・クズネッツの「逆U字のグラフ」を参照)。

 ただ、最近では、積極的に再分配をしないと格差は縮まらないという説も出てきています(トマ・ピケティ『21世紀の資本』での議論。とくに経済成長によって資本の蓄積が進みつつ経済成長が鈍ると、その格差は広がったままになってしまうようです)。なすがままに任せておけば自然に縮まるのか、それとも再分配は積極的になされるべきなのか、に関しては、マクロ経済学上のホットなトピックとして、ここ数年は議論され続けるように思います。

 これまでに、奇跡と呼ばれるほどの経済成長を達成しながらも最終的には低迷もしてしまうという、南米経済で過去に幾度も繰り返されてきたその轍を踏まないためには、このことがじつは最重要かもしれず、トルコのデモや中国の喧騒、ロシアの動乱をあわせて見るならば、ことさらそれは通底する経済的背景であるように私には思われるのです。

結局、2020年の東京オリンピックの経済効果はどうか

 2020年東京オリンピックの経済効果は、開催の蓋然性が非常に高い(未開催になるリスクが低い)ため、株価などには比較的早期に織り込まれるだろうと思います。

 開催までの準備計画が順次実行されていくごとに、それはGDPにも反映されていくでしょう。そのインパクトに関しては、五輪の投資が各回で同額程度だと仮定するならば、リオ五輪よりはロンドン五輪に近いものになると思います。そして、英国(世界のGDPにおけるシェアは4%ほど)よりも大きな経済圏である日本経済(世界のGDPにおけるシェアは7%ほど)にとっては、そのインパクトはやや小さめ、といったところでしょうか。あとは、いかに盛り上がって楽しめるかで、プラスα(の消費:C)も期待できるように思います。

【結論】(経済学的観点から見ても)東京オリンピックではみんなで盛り上がるべき!

佐々木一寿 著 『経済学的にありえない』(日本経済新聞出版社、2015年)「五輪やW杯は開催国の経済のためになるか」から
佐々木 一寿(ささき かずとし)
経済コラムニスト、サイエンス・ライター、作家。横浜国立大学経済学部国際経済学科卒業、経済系・報道系の記者・編集者を経て、現在はビジネス・スクールに在籍。研究員、出版局編集委員としての著作も多数。著書に『「30分遅れます」は何分待つの?経済学』(日経プレミアシリーズ)。

キーワード:経営、マーケティング、管理職、人材、営業、イノベーション、経営層

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