経済学的にありえない。

五輪やW杯、どれだけ開催国の経済に効くか 佐々木一寿氏

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 レアル安を嫌うとすれば、中央銀行の金融引き締めはありうる選択です。ブラジルでは(10%ほどの水準の)政策金利をもっと上げる施策となります。ただ、この策では、レアル安を防衛することはできるかもしれませんが、金利高がブラジルの経済成長の直接の足かせとなる可能性もあり、少なくとも当局は悩ましいのではないでしょうか。

 ただ、レアル安は悪いことだけではありません。いまや旅行消費大国となったブラジルの海外旅行愛好者にとっては痛手かもしれませんが、それは限定的な話で、国内に新たな海底油田が見つかるなど、ブラジルは資源国としても有数であり、農業も盛んなこともあり、原材料の輸入価格の上昇などによる国内経済への逼迫の影響はことさらに大きいとは考えにくいと思います。

 また、輸出に関してはレアル安は追い風にもなります。ここでもサプライサイドの改善が奏功の鍵を握っているといえますが、それが十分であれば、経済成長は堅調に推移するようにも思えます。レアルの為替自体というよりは、それへの対応がどうなされるかを総合的に判断すべきという感想はこのような理由によります。

 また、インフレへの当局の過度の対応も、上記と同様の引き締め効果があります。実質経済成長が予想よりも低いならば、経済成長を促すために多少のインフレ圧力には目をつぶって、実質金利が十分に低く保たれるように政策金利(こちらは名目値)もより低めに保たれるべきでしょう。

 もちろん、インフレ目標があるかぎり、それは守られなければなりません。2013年夏にブラジルの中央銀行は為替介入を実施し、政策金利の引き上げ(金融引き締め)も実行していますが、その意味で、W杯を終えリオ五輪を控えるいまのブラジルは、ギリギリでの手綱さばきをしているという印象を受けます。金融当局は、綱渡りを強いられながら時間稼ぎをしつつ、サプライサイドの早期の改善を、いまこの瞬間もまさに願い続けているのではないでしょうか。

先進国入りの鍵は

(クズネッツで大丈夫か、ピケティでないとダメか)

 そして、もっとも本質的であり注目されるのは、じつは再分配政策だと思います。国富が増えたとしても、それに偏りがあると感じられたり、貧困問題の解決に必ずしも使われていないと国民に感じられるならば、深刻化するデモはおさまらず、ボトムアップされた中産階級も健全に形成されにくいかもしれません。健全で分厚い中産階級の形成は、日本の例を引くまでもなく、自律的成長の大きなエンジンとなりえます。

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