経済学的にありえない。

五輪やW杯、どれだけ開催国の経済に効くか 佐々木一寿氏

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五輪が経済成長の正のスパイラルをつくるしくみ

 「世界経済の御意志」というものが明確にあるかどうかは私にはわかりませんが、五輪やW杯が新興国の振興のために役立ちうる機会であることは確かでしょう。実際に、W杯は2010年に南アフリカ共和国、14年にはブラジルで開催され、18年はロシア、22 年はカタールで開催されることが決まっています。

 オリンピックの場合は、厳密には国単位ではなく都市単位ですが、08年は北京(中国)、14年はソチ(ロシア)、16年はリオデジャネイロ(ブラジル)、18年は平昌(韓国)で開催。20年のオリンピックは東京での開催が決まりましたが、イスタンブール(トルコ)も最有力候補のひとつであったことは記憶に新しいと思います。

 新興国で、まず決定的に重要なのは、それによってインフラ整備が一気に進むことです。

 投下される資本が、まず国民の所得となり、それが消費拡大や新事業へ回ることにより、内需を押し上げ、それがやがてサプライサイドの発展を促し、雇用もまた拡大していく、という経済成長の正のスパイラルが回る過程で、インフラの整備こそがそのスムースさを下支えするだろうことは、1964年の東京オリンピック後の日本の高度成長過程を参照するまでもなく、想像に難くないのではないでしょうか。これがまさに、「ケインズ政策」を効果的にする要因ですし、公共事業によるインフラ整備が是とされる理論的な根拠となります。

 そして、その結果としてボトムアップ的に中産階級が厚く形成されてくれば、やがて新興国は経済先進国へと歩を進められるかもしれませんし、少なくともその足がかりはつかめるでしょう。たとえば中国の経済は、まだ道半ばということもあり多少の異論や反論はあるかもしれませんが、(たとえ共産圏を標榜しているにしても)このようなプロセスから大きくは外れていないように見えます。

 では、ブラジルの場合はどうでしょうか。経済構造の分析とモメンタムの分析をしていくとして、見ていくべき重要な項目は、経済成長率(GDP推移)、為替、政策金利、インフレ率、失業率、資源の有無と配分、再分配政策、そしてそれらを含んだ大きな文脈としての歴史的経緯です。

経済効果は"いつ"あらわれるのか

 2014年のW杯、そして、2年後のリオ五輪が注目され、当然、その波及効果はあるのだとしても、それは直近にだけあらわれるものではなく、すでに織り込まれているものも多くある、ということです。

 たとえば南アでは、W杯開催時の経済成長率(実質GDPベース)は7%台でしたが、今回のブラジルに関しては、2%台ではないかという見方がもっぱらとなっています。ただそれは、W杯の経済効果の少なさを直接的に示していると考えるには難しい面もあります。国際的な大イベントは決定から10年弱(という長い期間)を経て開催されるため、経済効果はそれまでに十分織り込まれている、ということもありえるからです。

 逆に、もし開催が危ぶまれれば、その織り込みはより直前になる、ということも当然ありえることです。もしかしたら、ブラジルに関しては、W杯や五輪の開催は非常に蓋然(がいぜん)性の高い(確からしい)ものとして理解されていたのかもしれないという見方もできます。これはどちらかと言えば、新興国的というよりは経済的成熟国としての特徴を示していると思います。1970年代で1度、高度成長を終えたブラジルは、やはり狭義の(純粋な)新興国とはいえない、という事情もあるかもしれません。

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