経済学的にありえない。

五輪やW杯、どれだけ開催国の経済に効くか 佐々木一寿氏

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 2020年の東京でのオリンピック開催が決まり、気になるのがその経済効果です。56年ぶりの世界的な祭典の決定で、報道では文字通り景気のいい歓声に包まれていましたが、では、それで、世の中の景気が本当によくなるのでしょうか。

 景気浮揚効果はじつはなくて、それはただの散財なのか。あるいは景気浮揚効果があるとすれば、どのようなメカニズムでどのように織り込まれていくのか。

 これは経済学的には抽象的な議論にもなりやすいテーマなのですが、今回は、実際の例で、できるだけ具体的に考察していきたいと思います。

 格好の例として、最近、サッカー・ワールドカップ(W杯)を2014年に開催したばかりで、さらにはその2年後にリオ五輪を控えるという、なんともミラクルな状況になっているブラジル経済がありますので、これを題材に詳しく見ていくことにしましょう。

経済学的に見れば、オリンピックは「ケインズ政策」?

 ブラジルは南米経済の中心的な存在で、また、世界規模で見ても大変重要な国ですが、それは、世界経済を考えたときに、いわゆる"経済的新興国"の発展が寄与するところが非常に大きいからです。新興国を示す代名詞ともなっている「BRICs」という言葉は、ブラジル、ロシア、インド、中国(とそのほか)といった意味ですが、その成長が世界経済の発展を支えている、といっても言い過ぎではないことは、20年前の世界経済と比較してみるまでもないのではないでしょうか。

 世界的な大イベントである五輪やW杯は、(主催者にはそのつもりはないかもしれませんが)経済学的には「世界的なケインズ政策」という側面ももっています。開催が計画的になされ、世界中、そして自国からの莫大な収益が半ば約束され、それを見込んで、事前に投資を行うことができるからです。

 投資だということは、GDP(国内総生産)を引き上げます。そして、GDPの成長率が大きいことを、経済学では「景気がよい」と定義しています(ざっくりとですが)。マクロ経済学ではよくY=I+C(+G+Nx)という1次方程式(※)が出てきますが、めんどうな変数はいまは放っておいていただいて(もちろん別の場面では重要ですが)、ここではYとIにだけ注目します。ここではYがGDPのことで、Iが投資となりますが、Iが増えるとシンプルにGDPが増える関係にある、ということがわかると思います。つまり、いきなり答えを言うことになって恐縮ですが、「景気はよくなる方向に動く」という結論になります。

(※)YはGDP、Cは消費、Iは投資、Gは政府支出、Nxは純輸出。

 もちろん、これは全体の話で、(有限な)Iの使われ方次第では、不足を感じるセクターも出てくるかと思います。そのセクターあるいは地域は潤わないということは十分にありえることですので、どこもかしこも景況感を享受できるというわけではもちろんありません。ただ、国全体としては、プラスの方向への効果がある、とはいえるのですが、それは、五輪やW杯の投資効果によるものなのだ、というのが、抽象的な経済モデルからの説明となります。

 では、実際の経済では、どうなっているでしょうか。

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