経済学的にありえない。

負けが込むと強気になるのはなぜか 佐々木一寿氏

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リスクの難しさ......その1:真の期待値がわからない、あるいは変わる

 ある機会があるとして、その機会のリターンが本当に中立的かがよくわからないということはあると思います。たとえば、ある投資信託の説明書を読んでみたらその内容には納得したとしても、その会社の破綻のリスクを織り込んでいないものだった、ということはありうることです。本来であれば織り込まれるべきこのリスクがもし織り込まれていないのであれば、これはリスクとリターンの関係が中立的ではない可能性が出てきます。つまり、本当の期待値はマイナスである可能性があります(真の期待値がわからない)。

 また、破綻の場合は、単独社だけでなく関連性も出てくるため、さらに確定的なことはなかなか言いにくくなります(真の期待値が変わる)。

リスクの難しさ......その2:確率分布が不明、あるいは変わる

 期待値は最終的にニュートラルであることは明白であっても(たとえばみんなから集めたおカネを見えるかたちですべて再分配する場合など)、どのような配分がなされるか、ということがよくわからない場合もあります。

 あるゲームがあり、箱に入っているボールが赤か黒しかなく、どちらかを引けば商品がもらえるとして、そのボールの色は引く側が選べるとしても、箱の中の赤と黒のボールの割合が知らされていない場合では、たとえばどちらも50 %だと知らされている場合に比べ、より魅力のないものになるようです(ボールの割合にかかわらず、引くボールの色を選ぶことができるので、期待値は半数ずつのときと同様、2分の1となる)。

 また、途中、なにかの拍子(手違いなど)で、その色が入れ替わったり、個数が変わって出現確率が変化してしまうこともありえるとすれば、これも非常に躊躇(ちゅうちょ)したい気持ちになってしまうかもしれません(出現確率が変わる)。

リスクの難しさ......その3:出現自体が想像できないが、起こると甚大なものの存在

 そして、想像もできない事柄が実はありえて、それが出現すると大きな影響が及ぶけれども事前に感知できない、ということも考えられます。これに関しては、原理的に備えるのは難しいと言えます(さきほどのゲームの会場で、信じられないほどの大地震が起こる場合や、存在するとは想定もしていなかった"黒い白鳥"が見つかる場合など)。

 本連載の当初の定義どおり割り切ってリスクを扱うこともできますが、ただ実際の場面を考えると、本当にそのようになっているか、どこまでをどう扱うか、それらを含めて考えなければいけない、という類の難しさが存在するのもまた事実で、いろいろな厄介を引き起こします。

 というわけで、当初のリスクとは区別して、それから漏れるものを「不確実性」と呼んだりもします。

 リスクを当初の「ハイリスク/ハイリターン、ローリスク/ローリターン」の原則として限定的に使いたいときなどには、とくに区別して言及されます。ざっくり言えば、リスクといったときに広義では「リスク+不確実性」、狭義では当初の定義どおりの「リスク」という捉え方でだいたい対応可能だと思います(これは経験上、文脈や使用する人によってよく違ったり変わったりしやすいように思いますので、場合によっては注意が必要です)。

 そんな厄介この上ないリスクですが、私たちは、意識的にも無意識的にも、それにどう対応しているのでしょうか。

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