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うつ病で退職、1年後に労災申請し認定される理由は? 本間邦弘氏

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うつ病で退職、仕事のせいで病気になったと退職1年後に労災申請し認定される。理由は?

 A社会福祉法人が経営する施設で介護士として勤務するBさんは、採用されてから遅刻や欠勤が多く、6カ月後にはうつ病と診断されました。Bさんはその後休職しましたが、3カ月間の休職期間が満了しても復職できなかったため、自己都合退職となりました。

 しかし退職して1年以上経過したある日、Bさんから「自分がうつ病になったのは過重労働と上司であるC部長のパワハラが原因である」として、A法人に労災の申請をするよう求めてきました。A法人がBさんの勤務状況を確認したところ、在職期間中の時間外労働は月30時間に満たないものであり過重労働の事実はなく、またパワハラをしたとされた元部長もすでに退職しており事実を確認できませんでした。労災保険の申請については、A法人が拒否したとしてもBさん自身でも申請が可能なことから、「当法人では過重労働の事実がないことを確認したが、退職者の要請により申請するので、当局の判断をいただきたい」と記載し、所轄の労働基準監督署(労基署)に対して労災申請を行いました。

 労災の申請を行って約9カ月後に、労基署は「労災不支給」の決定をしましたが、Bさんはこれを不服として労働局に審査請求を行い、約6カ月後に労災が認定されました。労災として認められたのは、不服申立中に労災認定に関する新しい認定基準が策定・実施されたことが大きいと考えられましたが、A法人側には驚くべき出来事でした。

発生の要因

 Bさんは、採用されてから試用期間中に遅刻を6回、欠勤を4日していましたが、A法人では人出が不足していたことから、これを黙認してしまったことが大きな要因であり、本来であれば試用期間中に本採用の可否を判断すべきであったと考えます。

A法人の対応など<事実確認>

 A法人では、次の事項から過重労働がないことを確認し、労災の申請書(療養補償給付申請書)を提出しました。

(1)Bさんへの事実確認

 総務課がBさんに電話で話をすると、Bさんは「手紙に書いた通りです。労災の申請をお願いします。これ以上、連絡しないでください」とのことでした。

(2)Bさんの元同僚や上司などへの事実確認

 Bさんが在職していたときの元同僚やその上司である課長へ聞き取りをしたところ、残業は部署で一番少なく休日労働もしておらず、夜勤はあるものの時間が長くなることはなかったようです。またBさんは、遅刻や欠勤に加え仕事のミスも多いため、部長からよく注意されていたものの、温和な元部長のCさんがパワハラをするとは考えられないとのことでした。

(3)元部長への事実確認

 C元部長はすでに定年退職しており、会社が電話をしても出ないため、留守電に何度も伝言しましたが、折り返しの電話はなく、事情を聞くことができませんでした。

(4)タイムカードなど書類等の確認

 労災申請を行った場合に、提出を求められる可能性のあるタイムカードや業務日報、賃金台帳などの書類を確認したところ、1カ月の時間外労働は月平均で27時間でした。

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