社員の不祥事・トラブルの予防と対策

病気で遅刻や欠勤を繰り返す社員への対応は? 本間邦弘氏

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個人情報だから健康診断書は提出しません、はたして社員の主張は正しいか

 オモチャやゲームのメーカーであるA社は、毎年10月に契約している病院で社員の定期健康診断を行っています。病院からの要請で、社員から「定期健康診断結果を会社に通知することに関する同意書」の提出を受け、病院から診断結果を送付してもらっています。しかし、4月に入社した女性社員のBさんは「健康診断の結果は個人情報ですから、提出するかしないかは私の判断であり、同意書は提出したくありません」と言い始めました。

 するとそれを聞いた他の女性社員数名からも「体重まで会社に知られるのは嫌だ」「就業規則に健康診断の結果を提出する規定がない」などと声が上がるようになり、なかには1度提出した同意書の取り消しを求める社員まで現れるようになりました。A社の総務担当者は、BさんやBさんに同調する女性社員に何度か説明を行った結果、ようやく理解を得ることができ、健康診断記録を揃えることができました。果たしてBさんの主張は正しいのでしょうか。

発生の要因

(1)就業規則の不備

 A社の就業規則の健康診断の項目は、「会社は、原則として1年に1回、定期健康診断を実施し、社員は正当な理由がない限りこれを受診しなければならない」という記載しかしておらず、健康診断結果の提出について定めていなかったことが大きな要因と考えられます。

(2)社員への説明不足など

 健康診断結果は、氏名、住所、生年月日などが記載されており個人情報保護法第2条にいう「特定の個人の情報」ということができます。しかし、健康診断を実施することや診断結果を記録として保管する義務が法律上、会社にあることを社員にわかりやすく説明していなかったことも問題が大きくなった要因と考えられます。

A社の対応と対策

1.会社が行う健康診断に関する説明書を作成、配布

 次のポイントについて記載した説明書を作成し、社員に配布しました。

a.健康診断結果は、氏名、住所、生年月日などが記載され個人情報であること。

b.個人情報保護法第23条1項では、「法令に基づく場合」には本人の同意なしに第三者に個人データを提供できる(趣旨)とされており、労働安全衛生法(安衛法)第66条1項から4項では会社に健康診断の実施義務があることが定められており、この「法令に基づく場合」にあたること。

c.安衛法第66条の3により、会社は労働者の定期健康診断の診断結果を記録しておかなければならないこと。

d.安衛法第120条では、健康診断の実施義務などに違反すると会社が罰金50万円以下に処せられると規定されており、それほど強い義務であること。

e.安衛法第66条第5項では、本条に基づいて事業主が行う健康診断について労働者が受けなければいけないことが規定されていること。

※厚生労働省の「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン(平成24年告示第357号)」の雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うことにあたっての留意点第3(2)においても、会社が実施の義務を負う健康診断の健康情報については、「法令に基づく場合」に該当するとしています。

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