経営の失敗学-ビジネスの成功確率を上げる

その価値、顧客が求めていますか? 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 菅野 寛

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 ここでお中元・お歳暮の時期に、「お世話になったあの人に何を贈ろうか、耐熱ガラス食器にしようか、それともワイシャツの仕立券にしようか」と、顧客が悩むとするならば、耐熱ガラス食器メーカーにとっての競合は、ワイシャツの仕立券になります。その場合、このメーカーは他の食器製品との対比ではなく、ワイシャツの仕立券よりも耐熱ガラス食器のほうが贈り物として良いことをアピールしなくてはなりません。

 この例からもわかる通り、競合とは「顧客が」考える他の選択肢のことです。したがって、あなたの競合が誰かを決めるのは、あなたではなく、顧客です。それを勘違いして自分勝手に競合を決めてしまうと、思わぬ競合の存在に気づかず、適切な対応が取れなくなってしまうのです。

 競合をどの土俵で捉えるか、ということは重要です。特に、コップの中での同業他社との競争なのか、違うコップ(違う業界)と戦っているのかを認識することです。それを決めるのは企業側ではなく、顧客であることに注意しなくてはなりません。

 たとえば、携帯ゲームの制作会社が、ほかのライバル会社よりもいかに面白いゲームを作るかに取り組んでいるとすれば、これはコップの中での同業他社との競争です。

 一方、ユーザーが急に空き時間ができたときに、携帯で何をするかというと、ゲームをするとは限りません。ニュースを見る、友達とチャットする、などなど。そうだとすれば、競合相手は携帯電話端末へのニュース配信企業やSNS企業であり、違うコップ(違う業界)の相手と戦っていることになるのです。

 競合の土俵を狭く捉えるか、広く捉えるかは、ケース・バイ・ケースです。通常は狭く捉えがちで、それで失敗してしまう例が多いので、気をつけなくてはなりません。

競合よりも優れた製品・サービスを提供していない

 競合が誰かを正しく認識したとしても、その競合よりも優れた製品・サービスを提供していないという過ちも犯しやすいものです。

 戦略論には「競争優位性」(Competitive advantage)という概念があります。「我が社の製品・サービスには競争優位性がある」という場合、それは「顧客が何かの製品・サービスを買おうとしている場合に、顧客が考える選択肢を、顧客の判断基準で判断して、他の選択肢よりも自社の提供する製品・サービスのほうが相対的に優れている」という意味です。

 ここでのキーワードは2つあって、「相対的」と「顧客の判断基準」です。

 「相対的」というのは、他との比較で捉えた見方です。これを絶対評価と勘違いしてしまうことがよくあります。自社は絶対評価で90点だから十分だ、自社には強みがある、と思い込むのです。

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