経営の失敗学-ビジネスの成功確率を上げる

経営の失敗パターンは大きく3つある 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 菅野 寛

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 トルストイは「幸せな家庭はどれも似たように見えるが、不幸な家庭は様々な形がある」(『アンナ・カレーニナ』)と言っていますが、私はビジネスではむしろその逆だと思っています。すなわち、「成功パターンは様々で共通性・再現性はないが、失敗パターンはかなり共通性がある」というのが、これまで様々なビジネスに関わって私が実感するに至った観察結果です。これまでの経験から、失敗のパターンで多いものは次の項目です。

失敗のパターンは共通している

 失敗のパターンは大きく3つに分けることができます。1つ目は、ビジネスを行うに当たってのそもそもの「考えるアプローチ/頭の使い方」に問題がある場合です。2つ目に、ビジネスを立案する段階での失敗。これは立案の段階で既に地雷を踏んでしまっているので、間違ったプランを実行してもうまくいかないことが多いのです。3つ目に、仮にプランは良くても実行段階で犯してしまう失敗です。この3つは、さらに細分化できると思います。

経営の失敗パターン

 まず、「考えるアプローチ/頭の使い方」ですが、以下の失敗が多く見受けられます。

・教科書の理論を何も考えずにそのまま使ってしまう

・意思決定の質とスピードのバランスを欠いている

・そもそもの出発点としての論点がずれている

 次に、ビジネスの立案段階での失敗のパターンです。

・そもそも戦略の筋が通っていない

・顧客が求めている価値を提供していない

・定性的なロジックの詰めだけで満足して、定量的な数字の詰めが甘い

・不確実性やリスクに十分対処していない

・地雷排除をやり過ぎた結果、戦略が「尖っていない」

 そして何よりも重要な実行段階での失敗パターンです。

・実行の徹底度が足りない

・実行者の意識や行動を変えていない

 このリストを見ると、「当たり前のこと」だと落胆する方もいるかもしれません。特に目からウロコが落ちるような「かっこいい」ビジネスの秘訣を期待しているとすれば、がっかりすることでしょう。

 しかし、ファーストリテイリングの柳井正さんも「経営とはいかに当たり前のことをいかにしっかりとやるかである」と言い切っています。多くの企業の多くのビジネスを見てきた私の経験上、この「当たり前のこと」が驚くほどできていません。「そんな当たり前のことができていないなんて!」と思うことが、本当に多いのです。そして、その当たり前のことを徹底して行うだけでも、相対的に優位に立てるチャンスが出てきます。ですから、決しておろそかにすべきではありません。

菅野寛 著 『経営の失敗学-ビジネスの成功確率を上げる』(日本経済新聞出版社、2014年)第5章「失敗学の有用性」から
菅野 寛(かんの ひろし)
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。東京工業大学工学部卒業、同大学院修士課程終了。カーネギー・メロン大学経営工学博士。日建設計をへて、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に就職。BCGでは十数年にわたって数十人以上の経営者の意思決定をサポートした。2008年より現職。主な著書に『BCG流 経営者はこう育てる』(日経ビジネス人文庫)がある。

キーワード:経営、マーケティング、管理職、人材、営業、イノベーション、経営層

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