経営の失敗学-ビジネスの成功確率を上げる

経営の失敗パターンは大きく3つある 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 菅野 寛

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

 負けない戦略は、才能やひらめきではなく、地道な努力で作ることができます。天才の才能やひらめきに頼る戦略はうまく当たったときは「かっこいい」のですが、そもそも属人的な技量に頼っているので、再現性や持続性に乏しいのです。地雷排除は地味でかっこよくありませんが、努力さえ惜しまなければ、天才でなくても実行可能です。組織として再現性があり、持続性を保つことも可能となります。

なぜか企業は地道な「負けない戦略」作りを怠る

 ところが、なぜか多くの企業はこの地道な「地雷排除」を怠ってしまうのです。その理由として、たとえば、次のような心理が働くのかもしれません。

 地味で目立たない。つまらない。目先のことに忙殺されて、ベーシックを忘れる。費用対効果がないと思っている。当たり前すぎておろそかにしてしまう。新しいことをやらないと仕事をやった気にならない。失敗を回避する作業はクリエイティブに思えない。基本の点検作業はネガティブ・チェックであり、一見すると、ダメな部分のあら探しで後ろ向きである。こんなことを地道にやるよりも、勘や度胸で乗り切ったほうが速い......。

 いずれにせよ、諸事情により、多くの競合企業が「地雷排除」を怠っているとすれば、その中で、あなたの会社がきっちり地雷排除を行うことには意味があります。なぜならば、競合他社が地雷を踏んで自滅するのを待っているだけで、生き残った自社が自然と勝者になる。すなわち、「負けない戦略」が結果として「勝てる戦略」になる可能性も少なくないからです。

 小売流通業のイオングループはショッピングモール、GMS(ジェネラル・マーチャンダイズ・ストア)、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなど、様々な小売業態を手掛けています。この連載の執筆時点では日本最大の小売流通グループとなっており、明らかに小売流通業の勝ち組です。

 同社は前身のジャスコの時代から、どちらかといえば地道に商売の王道をコツコツ行っており、それほど尖った華々しい戦略を取っているようには見えませんでした。バブルのころも、他の企業が陥ったような不動産投機や財テクに走ることはありませんでした。やるべきことをきちんとやり、踏んではいけない地雷を踏まないやり方を取っているうちに、ヤオハン、マイカル、ダイエーなど、周囲の競合企業が地雷を踏んで自滅し、イオンや他企業に吸収合併されていき、結果としてイオングループが勝ち組となったのです。

 これらの競合企業が踏んだ地雷は、不動産投機の失敗、無理な海外進出の破綻、過度の拡大路線の破綻など、それぞれ異なります。競合企業に対してイオンが勝ったという言い方もできますが、ある意味では競合企業が負けていったとも言えるでしょう。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。