経営の失敗学-ビジネスの成功確率を上げる

経営の失敗パターンは大きく3つある 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 菅野 寛

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 ちなみに、一橋ICSの同僚である楠木建教授は著書『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)の中で「ビジネスとは80%は運である」と看破しています。個人的には、80%はやや言い過ぎかなとも思いますが、大筋は賛成です。経営者は運についてはコントロールできません。しかし、戦略と努力についてはかなりの程度、コントロールできます。したがって、コントロールできる部分をしっかりと行い、いかに成功確率を上げていけるかが問われるのです。

 ビジネスとは、成功の保証がない、大変につらいゲームです。努力しても報われないことは多々あります。それでも、成功確率を上げるために取り組んでいくしかありません。そうやって成功したときの喜びは、何ものにも代え難いでしょう。

負けない戦略を立案するためには天才である必要はない

 繰り返しになりますが、「絶対に勝てる戦略」すなわち「成功の十分条件」はありません。しかしながら、「これをやったらほぼ確実に失敗する」、すなわち「これをやってはいけない」という「DON'T」は存在します。別の言い方で言い換えると、「踏んではいけない地雷」は存在すると私は思っています。そして、成功の十分条件は存在しないにせよ、地雷を踏まないことが、少なくとも「成功の必要条件」となると考えることができます。

 先に、成功している企業には3つの条件〈(1)負けない戦略、(2)他社を凌駕する努力、(3)(3)時の運〉が揃っていると申しました。このうち(1)の戦略に関して、「必ず勝つ戦略」を作ることは非常に難しい、というよりも不可能です。しかしながら、「負けない戦略」を作ることはできます。なぜなら、徹底的に地雷を排除していけばよいからです。

 地雷の排除作業は、天才のひらめきや思いつきによる作業ではなく、地道なローラー作戦です。論理的に、緻密に、地道に考えて調査・分析すれば、多くの地雷は発見し排除することができます。地雷の大半は、当たり前の基本的なことができていないといった類いのものです。たとえば、現状の戦略や施策について「お客様のニーズと乖離(かいり)していないか」「市場は十分な大きさか」と、基本的な事柄を常に問い直し、修正していくだけでも、かなりの部分、地雷は回避できるのです。

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