経営の失敗学-ビジネスの成功確率を上げる

経営の失敗パターンは大きく3つある 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 菅野 寛

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成功の必要条件は「戦略×努力×運」

 私が観察したところ、「結果として」成功しているのは、負けない戦略、他社を凌駕(りょうが)する努力、時の運という3つの条件がすべて揃った企業です。

(1)負けない戦略×(2)他社を凌駕する努力×(3)時の運=結果としての成功

 ここで誤解してはいけないのが、この3つが揃うことは成功の必要条件であって、十分条件ではないことです。すなわち、3つがすべて揃っても、必ず成功する保証があるわけではありません。一方、3つのうちどれか1つでも欠ければ、高い確率で失敗します。正確に言えば、いずれかが欠けている場合、瞬間的にうまくいくことはあっても、長期的に持続可能な成功はあり得ないのです。

 たとえばトヨタの場合、(1)の「負けない戦略」は、在庫をゼロにすると諸問題が解決できるので、ジャスト・イン・タイムを取るというロジックが該当します。しかし、この戦略だけでは駄目で、その実行を徹底させるためには、(2)の「他社を凌駕する努力」が必要です。トップだけがトヨタ生産方式を理解していてもうまくいかないため、現場の作業員一人ひとり、さらには1次、2次サプライヤーがきちんと実行できるように、徹底的に人を育てる努力をしています。もちろん、特定の価値観を持った人材を育てるのには5年や10年はかかりますが、それが組織として取り組んでいかなくてはいけない「他社を凌駕する努力」に該当します。

 もちろん、(2)の「他社を凌駕する努力」をいくら行っても、そもそもの(1)の「戦略」が間違っていれば成功はしません。3つの要因の1つでも欠けていると成功しないという所以(ゆえん)です。しかしながら、(1)戦略と(2)努力がきちんとしていても、10回中10回とも必ず成功するわけでもありません。それは、(3)の「時の運」に引っ張られるからです。

 たとえば、トヨタは2009年から2010年にかけて北米でリコール問題を起こしました。フロアマットのシートが、同社が予想もしなかった使われ方をされており、それによって運転に支障をきたす事態が生じていたのです。自動車メーカーとして消費者理解が不足しているともとれますが、そこまで気を配っている自動車メーカーはトヨタも含めていなかったのです。たまたまトヨタ車で最初に事故が起こってしまったので、ある意味では「運が悪かった」とも言えるでしょう。

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