経営の失敗学-ビジネスの成功確率を上げる

経営の失敗パターンは大きく3つある 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 菅野 寛

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 プロ野球の野村克也監督は、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」と述べています。すなわち、負けるときは負けるべくして負けているわけです。

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし

 この言葉はもともと、江戸時代の大名で剣術の達人でもあった松浦静山の剣術書『常静子剣談』にある一文から引用されたものです。「負けるときには、何の理由もなく負けるわけではなく、その試合中に必ず何か負ける要素がある。一方、勝ったときでも、すべてが良いと思って慢心すべきではない。勝った場合でも何か負けにつながったかもしれない要素ある」という意味です。

 試合に勝つためには、負ける要素が何だったかを抽出し、どうしたらその要素を消せるかを考えていく必要がある。また、もし勝ち試合であっても、その中には負けにつながることを犯している可能性があり、その場合は、たとえ試合に勝ったからといって、その犯したことを看過してはならない、という戒めを述べているのです。これはビジネスも全く同じではないでしょうか。

 世の中には、成功のハウツーものは多いのですが、実際にはむしろ失敗から多くのことが学べるものです。失敗をメインテーマに据えた古典的名著といえば、何と言っても一橋ICS(一橋大学大学院国際企業戦略研究科)の野中郁次郎名誉教授が防衛大学の研究者などと行った共同研究の成果『失敗の本質』(1984年ダイヤモンド社から刊行、1991年中央公論社が再刊)でしょう。これは、日本軍の失敗から何が学べるかを扱ったものです。企業の話ではなく、軍事研究の本ですが、ビジネスに対する示唆も非常に多いと思います。

 この本が示唆に富んでいるのは、「なぜ負けたのか」という問いを、表面的な現象面(たとえば、ミッドウェーでのこの作戦がいけなかった、意思決定者A氏の采配がお粗末だった、たまたま飛行機の数で負けていた、など)で分析していない点にあります。むしろ日本軍には戦い方や思考方法、行動プロセス、あるいは組織面で一定の癖があり、それが失敗の本質ではないかというアプローチで迫っていきます。組織のあり方、価値観にまで踏み込んでいるので、示唆が非常に深くなるのです。

 これを、ビジネスに置き換えて、環境に対応するための仕組みやプロセスに問題があるという指摘は非常に参考になります。このように個々の戦術レベルの話ではなく、環境に対応する仕組みにメスを入れていく視点は、企業の文脈でも役に立つはずです。

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