経営の失敗学-ビジネスの成功確率を上げる

成功は学べない――アパレル3社に見るモデルの違い 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 菅野 寛

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成功の十分条件(必勝法)は存在しない

 私はコンサルタントから経営大学院の教授に身を転じたときに、これも良い機会だと思い、経営コンサルタント時代の経験を振り返ってみました。そこで気がついたことは次の一言に尽きます。

「こうすれば必ず成功する」という成功の十分条件(すなわち"必勝法")は存在しない

 クライアントが成功するように手伝うことがミッションであるコンサルタントとしては、この結論には何とも悲しいものがありますが、これが私が学んだ教訓です。

 実際に、ある地域独占の事業会社を運営している経営者から「100パーセント勝てる必勝法を提言してくれ」と依頼されたこともありました。「そんなものはありません。あるとすれば、提言して数千万円のコンサルタントフィーをいただくよりも、私が自分でその事業を実行して、数億円、場合によっては数百億円を稼いで大金持ちになりますよ」と答えると、「コンサルタントのくせに、勝てる提言ができないとはけしからん」とお叱りを受けました。

 もっとも、厳しい自由競争に揉まれている企業経営者であれば、100パーセントの必勝法はないことは骨身に沁みてわかっているため、そんな依頼はまずしません。この経営者は独占事業に携わっていたので自由競争に揉まれた経験がなく、何らかの必勝法があると信じたかったのかもしれません。

 とにかく、そのような必勝法がない以上、経営者にできるのはいかに成功確率を上げていくかということです。できることをしっかりとやり、あとはリスクを管理するしかない。それがビジネスというゲームの本質です。

菅野寛 著 『経営の失敗学-ビジネスの成功確率を上げる』(日本経済新聞出版社、2014年)第4章「成功は学べない」から
菅野 寛(かんの ひろし)
一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。東京工業大学工学部卒業、同大学院修士課程終了。カーネギー・メロン大学経営工学博士。日建設計をへて、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)に就職。BCGでは十数年にわたって数十人以上の経営者の意思決定をサポートした。2008年より現職。主な著書に『BCG流 経営者はこう育てる』(日経ビジネス人文庫)がある。

キーワード:経営、マーケティング、管理職、人材、営業、イノベーション、経営層

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