経営の失敗学-ビジネスの成功確率を上げる

成功は学べない――アパレル3社に見るモデルの違い 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 菅野 寛

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 日本企業の勢いが良かったころ、ハーバード大学名誉教授のエズラ・F・ヴォーゲルが出版した『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(ティビーエス・ブリタニカ)をはじめとして、日本型経営を褒め称える声が次々と上がりました。ところが、バブル崩壊して低迷の時期が続き、日本企業の元気がなくなってきたとたんに、日本企業の経営は駄目だという論調が目立つようになりました。

成功・失敗の「真因」を学ぶ

 ちなみに、「日本企業は今でも強みはたくさんある」と私は思っています。経営上の失敗はあるかもしれませんが、本来の特技や優位性は失われていません。やり方次第でチャンスはまだあるはずです。

 このように、その時々の結果だけを見て、短絡的に立場を変える「勝てば官軍」的な評価は空しいだけで、何の学びもありません。成功から学ぶ価値があるのは、「表面的な目に見えるアクション」(WHAT)ではなく「深層の成功・失敗要因」(WHY)です。成功あるいは失敗した企業がある意思決定やアクションを行ったという事実は、それ単体ではあまり意味がありません。ましてや、その意思決定やアクションだけを表面的にモノマネするのは最悪です。

 重要なのは「なぜ」その経営者がそのような意思決定やアクションを取ったのか、それを可能にした「要因」は何かという問いです。成功・失敗企業のどこが良いのか、どの特質がどの外部環境と合わさってうまく機能しているのか(機能しなくなったのか)を、深掘りしなくてはいけません。そうやって熟考していけば、一見すると当たり前でも、奥深い要因にたどり着く場合が多いはずです。

 たとえば、ある企業が成功しているという「現象」ではなく、その企業が成功している「要因」を深掘りすると、その企業の行動規範が見えてくるかもしれません。例えばその企業は「常に現時点でビジネスが成功している条件(KSF:key success factors)を痛いほど明確に意識している」「そのKSFがあと何年持続するか、あるいは、そのKSFが崩れる可能性を常に見極めている」「KSFが長続きせず崩れる可能性が見えたら座って待っていないで、対策を考え、たとえ痛みを伴っても先手を打っても実行する」という行動を常に取っていることがわかるかもしれません。このような学びのほうが、個々の表面的なアクションよりははるかに示唆に富んでいます。

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