経営の失敗学-ビジネスの成功確率を上げる

成功は学べない――アパレル3社に見るモデルの違い 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 菅野 寛

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ポイントの成功モデル――顧客目線での商品開発

 ポイントという企業名をご存知ない人が多いかもしれません。同社は「ローリーズファーム」「グローバルワーク」「ジーナシス」など多くのブランドを展開する日本のアパレル・メーカーで、やはりSPAの形態を取っています。

 ポイントがターゲットとするのは、すごく尖(とが)ったものではなく、適度におしゃれな服を着たいと思う、普通の感性を持ったどこにでもいる若い女性たちです。洋服を最もよく買う消費者は20~30代の女性なので、世代別、年齢別に見ると、最もボリュームゾーンのセグメントがターゲットであると言えます。こうしたどこにでもいる普通の女性が欲しがる「安カワ(手頃な価格で可愛い服)」を次々と投入しています。彼女たちが月に何度も買い物を楽しめるように、有名な高級ブランドなどと比べると、はるかに手の届きやすい中価格帯の商品を提供しています。

 なぜ、お手頃な価格で商品を提供できるのでしょうか。1つには、開発する商品を「外さない」からです。すなわち、ターゲット顧客がまさに欲しいと思う商品を開発する力がずば抜けて優れているからです。外さなければ売れ残りや品切れによるコスト増に苦しむことも少ないので、消費者価格を低く設定できるのです。実際、ポイントはほとんどの商品を値引きなしで売り切っています。

 では、どうすれば「外さない」商品を作ることができるのでしょうか。それは、店頭の販売員に、顧客と同じ年齢層、同じ好みの人々を起用して顧客ニーズを正確に把握しているからです。こうした販売員は、お客様と同じ目線で「この服は私もカワイイと思う」「私も着たいと思う」といった等身大の会話をしながら販売します。接客中に顧客との会話を通じてつかんだ好みやトレンドを商品企画に活かし、流行の読みを外さないようにしているのです。

 さらに、販売員から商品企画へという異動も多く行われています。商品企画責任者も顧客と同じ年齢層、同じ好みの人々を起用しています。たとえば、ポイントのブランドである「ジーナシス」の責任者、「ヘア」の責任者はいずれも30代前半の女性です。こうした人々は、服飾学校で専門訓練を受けたプロのデザイナーではなく、いわば「顧客の代弁者」です。したがってパターンや採寸などの商品企画の専門知識はあまり持ち合わせていません。

 それにもかかわらず商品企画ができるのは、そうした専門知識を必要とする部分は外部のプロにアウトソースしているからです。むしろ重要なのは「こういう服が欲しい」と、顧客になり切って顧客ニーズを表現できることです。

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