経営の失敗学-ビジネスの成功確率を上げる

成功は学べない――アパレル3社に見るモデルの違い 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 菅野 寛

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ZARAの成功モデル――売れたものをさらに売る

 流行を予測することは難しいという問題に対して、ZARAは予測精度を高めようとするのではなく、店頭に並べた商品のうち、売れたものを直ちに増産し、店舗にたくさん並べる。つまり、製造から販売までのリードタイムを短くすることで勝負するという戦略に立って、自社のビジネスを組み立てています。

 たとえば、ZARAはいわゆるSPAの形態を取っています。他社(メーカー)が作った服を仕入れて販売する「普通の」アパレル小売業の仕組みではリードタイムは短くならないので、自社で企画して作る(厳密には製造委託する)形態を選択しているのです。

 ZARAはシーズンごとに服を買い替えるような流行に敏感な若者にターゲット顧客を限定しています。たとえ高価でも良い服を何年も着るような顧客は対象外となります。買った服はワンシーズンしか着ないような顧客層がターゲットなので、何年も長持ちする服を作る必要はありません。そこまで耐久性にこだわる必要がないので、低コストとなり、その分消費者価格を低く抑えて商品を提供できるのです。

 若者の多くは、流行は気になるけれど経済的に余裕がないという場合が多いのですが、低価格であれば十分に手が届く上、ワンシーズンだけ着て、次のシーズンはまた買い替えることも可能です。こうして、好循環のロジックが成り立っているのです。

ZARAのビジネスモデル

 一部の高級ブランドのように、お金のかかるファッションショーを行ったり、高級ファッション誌でコストをかけて広告宣伝したりするようなマーケティング活動も行いません。既に売れたものを瞬時に増産するZARAには、予測やマーケティングは必要ないのです。マーケティング費用があまりかからないので、その分、売価を低く抑えることができます。

 流行り廃りが激しいことさえ、大歓迎です。というのは、売れ筋がわかれば瞬時に増産して売り切るスタイルを取っているので、店頭に並ぶ商品は毎週のように替わっていきます。常に最新の流行を追っていきたいターゲット顧客は、そのほうが楽しいのです。来るたびに商品が替わっているので、毎週のようにお店をチェックしに来ます。そして、気に入った服があれば、翌週にはもう売り切れているのを知っており、価格も手頃なので、その場ですぐに購入するのです。

 毎週お店に来てくれるのであれば、お金のかかるファッションショーもファッション誌での広告によって顧客をお店に呼び寄せることも必要ないというロジックが成り立つのです。

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