経営の失敗学-ビジネスの成功確率を上げる

成功は学べない――アパレル3社に見るモデルの違い 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 菅野 寛

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 問題は人材の側面だけではありません。同じものを繰り返し大量に作る場合、どんな形状の製品でも作れる汎用性の高いマシンである必要性はないのです。1つのシンプルな形状だけを繰り返し作ることだけに特化した専用マシンに比べて、汎用マシンはかえってコスト高になってしまいます。

 したがって、技能の高い職人と汎用マシンを強みとするこのメーカーにとって、シンプルな形の同じ製品を繰り返し何千個も作る場合、自社の優位性が全く発揮されなかったのです。

 このB社のコンテクストを考えてみると、B社では、多様な難しい注文を高度な技術で少量作るために最適な仕組みが取られていたのです。それに合わないことをやれば、B社の仕組みが機能しないのは当然です。大量に作れば安くなるという「規模の経済性」は一見すれば論理的です。それはA社のコンテクストでは機能したのですが、B社のコンテクストのもとではむしろ逆効果になってしまったわけです。

アパレル各社が物語る「成功は十社十色」

 ビジネスには唯一絶対の正解がないため、成功にも様々なやり方があります。そのわかりやすい典型例が、アパレル業界でしょう。

 ファッション業界は流行り廃りが激しく、何が当たるのかを予測するのが極めて難しいことで有名です。アパレル企業の収益性を大きく損なうのは、流行の読みが上振れしたり、下振れしたりするときです。読みが外れて店頭で大きく売れ残りが出れば、たとえコスト割れしてでも、セールで売り切るしかありません。セールに回す率がどれだけ多いかが収益に大きく響きます。反対に、読みが当たったとしても、100枚を売るつもりが500枚のニーズがあった場合、400枚分の商機を逃したことになるので、大きなロスとなります。

 この流行り廃りが激しく予測が困難であるという業界特性に対して、カジュアルブランドとして成功しているインディテックス(ブランド名はZARA)、ファーストリテイリング(ブランド名はユニクロ)、ポイント(ローリーズファームなど、十数個のブランドを展開)は、それぞれ全く異なるアプローチで戦略を立て、それぞれが異なる理由で成功しています。

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