競争しない競争戦略

競合旅館を「顧客」に変えた星野リゾート 山田英夫氏

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 かつての競争戦略論では、同業他社は競合企業ととらえられていた(例えばポーター)。しかし近年、他社とは競争するだけでなく、協調の面もあることが認識されるようになってきた(ハメル、ドーズ&プラハラッド、ネイルバフ&ブランデンバーガー、ヨッフィー&クワックなど)。

 協調とは、「各社の強みの差が、結果に直接的な影響を及ぼすような無駄な争いを排除するもの」と定義される。協調戦略とは、競合企業とできるだけ競争をしないで共存を図る戦略と言える。

自社資源によって分かれる選択肢

 他社と協調する場合、当該事業を進める上で、自社でバリューチェーンの機能がすべてそろっている場合とそうでない場合では、協調の仕方が異なる。

 必要とされるバリューチェーンの機能を自社がすべて持っている場合は、自社のバリューチェーンの中に競合企業の機能の一部を取り込み、競争しながら協調することが可能である。自社の製品・サービスを販売しながら、競合企業の製品・サービスも合わせて販売する例が典型的である。

 アスクルは、もともとは親会社プラスの製品の拡販のために設立されたが、真に顧客志向を追求した結果、コクヨ、キングジムなどの競合他社の製品もカタログに掲載し、現在は売上の4分の3が他社品になっている。

 一方、業界で必要とされるバリューチェーンの機能を、自社ではすべて持っていない場合は、相手企業のバリューチェーンの中に入り込み、協調していく戦略が有効である。例えば、競合企業の機能の一部を代替するビジネスや、これまでなかった機能を追加するビジネスである。入り込める部分がわずかであっても、業界の大多数の企業の中に入り込み、その部分で寡占を作れれば、利益を生み出すことができる。

 なお、協調戦略においては、リーダー企業と協調できればその効果は大きいが、より多くの企業と協調することで、競争しない度合いが強まっていく傾向がある。

バリューチェーンの機能を代替・追加する

 他社と協調する戦略を考えるもう1つの選択肢として、競合企業のバリューチェーンの機能の一部を代替するのか、新たな機能を加えて入り込むのかという選択がある。

 前者は、競合企業のバリューチェーンの形は変えずに、その一部を代替することである。かつては内製化することが当たり前であった機能を、最近ではアウトソーシングするケースも出てきた。例えば、銀行におけるATM、クレジットカード会社におけるプロセシング業務や、リゾート施設の運営などである。

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