鈴木敏文 仕事の原則

新しい流通はすべて「素人」が生んだ、新鮮な感覚を失うな 緒方知行、田口香世

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 「いかなる過去の強者・覇者も、市場やお客様の要求の変化に応えられない者は、衰微・衰退を免れ得ない」――これは、セブン‐イレブンの生みの親・鈴木敏文氏の一貫して変わらぬ哲学である。鈴木氏は「変化への対応」の重要性を、まさにくどいといっていいほど繰り返し強調してきた。本連載では、その哲学を端的に表現した鈴木氏の談話を紹介するとともに、エッセンスを解説する。

鈴木敏文氏の「仕事の原則(5)」

 一般的に、仕事に就いたばかりのころは感覚も新鮮で、一つの方向に向かって素直に新しいものを追求できます。ところが、やがて時間が経ってくると、経験が邪魔をして、新鮮な感覚は希薄になってきます。そうすると、世の中の変化は非常に速いため、だんだん変化についていけなくなっていきます。

 それでは、過去の経験を打破し、常に新鮮な感覚を持ち続けるにはどうすればいいのでしょうか。セブン‐イレブンでいえば、OFC(店舗経営相談員)であれ、店長や売り場のマネジャーであれ、自分の店や他人の店であれ、売り場に立って必ず一つひとつの商品の動きを確認し、本当にいま売れている商品なのかをチェックしていく。このようなことがどれだけきちんとできているかを通して、変化に対する感覚を常に研ぎ澄ましておくということが重要です。

 流通業の歴史を振り返ってみたとき、新しい業態をつくり出した人たちは、全部素人でした。古今東西を問わずそうです。その担い手は未経験な新人たちでした。ベテランは新しい業態をつくり出していないのです。それは商売とは、常に人間の心理の変化とともにあるものだからです。ということは、どこまでお客様の心理とその変化をつかむことができるかにかかっているといえます。

 一般的にいって、「自分はお酒のことはよく知っている」と自負する酒屋さんの売上が上がらなくなっています。こういう状況のなかで、「セブン‐イレブンに加入して、ガラリと業績が変わった」という店が多い。それは過去の経験を断って、新しい感覚を店に取り入れたからです。

 その意味では、私自身がリーダーとして感覚が古くなってしまったら、価値は何もないことになります。常務でも、ほかの役員でも同じことです。ディストリクトマネジャー(OFCの上長)やゾーンマネジャー(ディストリクトマネジャーの上長)でも店長でも、安住していたらすぐに会社はダメになってしまうといえます。

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