鈴木敏文 仕事の原則

「お客様の目」を失うな、売り手論理の克服が使命 緒方知行、田口香世

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 「いかなる過去の強者・覇者も、市場やお客様の要求の変化に応えられない者は、衰微・衰退を免れ得ない」――これは、セブン‐イレブンの生みの親・鈴木敏文氏の一貫して変わらぬ哲学である。鈴木氏は「変化への対応」の重要性を、まさにくどいといっていいほど繰り返し強調してきた。本連載では、その哲学を端的に表現した鈴木氏の談話を紹介するとともに、エッセンスを解説する。

鈴木敏文氏の「仕事の原則(2)」

 昔あった話です。新入社員との懇親会で、「以前はお客様の立場でものを見ていましたが、実際に入社して売り場に立ってみると、売り手の立場がよく理解できるようになりました。売り手の立場になると、大変だということがわかりました」と聞いたことがあります。

 これは新入社員の率直な感想だと思いますが、私が一番怖かったのは、わずかな期間のなかで、彼らがお客様の目で見ることをやめ、売り手の立場に立ってしまっているということでした。

 なぜ品切れをしているのか? なぜ鮮度のいい商品がないのか? なぜ味が悪いのか? ということをお客様の立場から追求する姿勢を失って、「そんなことをいっても、それはお客様のワガママで、売っているほうは大変なんだよ」と、いつの間にか売り手の立場に立ってものを見るようになってしまうことが、私からいわせれば、もっとも恐ろしいことです。

 お客様の目になり、その立場から要求にきちんと応えることができるかどうかが、仕事に取り組むうえで、もっとも大事な姿勢です。どんなことがあっても、決して売り手側の論理を振りかざしてはいけません。

 売り手の立場からは、たとえワガママに思えても、そのお客様の要求に応えられるようなシステム、あるいは商品をどうつくり上げることができるか、そのお客様の立場にとことん立って仕事をするということこそが、売上を伸ばし、利益を伸ばすことに結果としてつながっていきます。このことを絶対に忘れてはなりません。

 この懇親会で私は、次のようにいいました。

 「君たちはこれからも、絶対にお客様の目を失わないでほしい。『そんなことをいっても仕方がない』『そんなことをいっても無理だ』という売り手側の論理を振りかざすのではなく、売り手側の論理を克服することを使命だと自覚して、これからの仕事の革新に取り組み続けてほしい」

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