M&A時代のマネジメント戦略

合併効果を左右するコミュニケーション クレイア・コンサルティング 執行役員マネージングディレクター 針生 俊成氏

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 日本でもM&A(合併・買収)が企業の主要な経営手法の一つとなってきた。だが、その成功率は必ずしも高いとは言えない。主な理由に挙げられるのが、組織マネジメント、中でも人事制度の設計、運営の難しさだ。従業員のモチベーションを維持しつつ、本来の目的である事業のシナジー効果やコスト低減をどう達成するか連載で考える。

コミュニケーションの欠落が合併を頓挫させる

 前回の記事「合併の人事リスクはいつ表面化するか」では、合併(組織統合)における人事制度と労働条件という制度(ハード)の統合について解説した。今回は、社員の意識(ソフト)の統合におけるポイントを解説する。

 合併は社員の処遇のみならず、働き方や将来キャリアなどにきわめて大きな影響を与える。これまで慣れ親しんできた仕事の仕方が変わり、「あうんの呼吸」が通じない人々との社内調整や協働作業が増え、ポストを競うライバルが増え、場合によっては手に入ると思っていたポストが消滅することもある。合併は、多くの社員にとって大きな不安要因なのだ。

 このような不安から、社内では合併について後ろ向きに語られることが多い。社内の様々な発表や通達も、「自分たちにどんな困難や不利益があるのか」といった目で見られる。会社の「公式見解」とは別に、社員の不安に基づく様々な「解釈」が横行し、それが真実であるかのように語られる。このような状態では、意識の統合など望むべくもない。

 コミュニケーションプランとは、上記のような社員の不安(場合によっては不信)を想定し、社員の不安を軽減させ、合併効果の最大化に向けて多くの社員の意識を統合していくための「戦略・作戦」である(下図参照)。

社員の不安を軽減するコミュニケーションプラン

 筆者の経験上、M&Aや合併の際はギリギリまで情報の流出を防止し、発表後はスピード感をもって統合作業を進めていくことが重視されるため、コミュニケーションプランが十分に検討されないまま進み、その結果、社員の離反や水面下での対立、あるいは静かなモチベーションダウンを引き起こしているケースが多いと感じている。コミュニケーションプランは、いわば「最後の詰め」なのだが、この詰めを疎かにしてしまったが故に、M&Aや合併の効果を損ねてしまっている。

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